絵画
恐くて、美しい眼の女 かくも恐ろしく、かつ美しい眼をした女性を描いた絵を、ほかに知らない。 タイトルは、「ホロフェルネスの首を斬るユディト」。 西洋絵画ではおなじみのテーマで、クラナッハ、クリムトなど有名な画家の無数の作品が残されている。 し…
絵画・映画批評秘められたエロティシズム 17世紀のオランダの画家、ヨハネス・フェルメールの描いた『真珠の耳飾りの少女』は、非常に多くの謎を秘めた絵画であるという。 まず、制作された時期が分からない。 誰の注文によって描かれたのかも分からない。 …
▲ デロス島のアイネイアスのいる風景 クロード・ロランという人の絵が好きだ。 彼は、17世紀のフランスで活躍した画家で、当時の裕福な王侯貴族たちをパトロンに抱え、古代ローマ時代の建築群などをモチーフにした風景画を描いて好評を博し、名誉と栄光に包…
昔、土曜日の夜に家にいるときは必ず観ていた番組があった。 テレビ東京『美の巨人たち』(10:00~10:30)。 この番組が改変され、タイトルも変わって『新 美の巨人たち』となったのは、2019年4月6日からだった。 新しくスタートした新番組がどんな内容だ…
フィルム・ノワールに影響を与えたエドワード・ホッパー ▲エドワード・ホッパー 「ナイトホークス」(1942年) 「ホッパーの作品はしばしば映画のワンシーンに例えられる」 と、よくいわれる。 特に、この「ナイトホークス(夜ふかしする人々)」という絵は…
絵を紹介した記事のタイトルが、上のものだった。 すなわち、「これが、太郎なのか」 朝日新聞2020年12月8日(火)の夕刊の記事だ。 その新聞の2ページ目。 「美の履歴書」と題された美術品紹介コーナーに、この絵が掲載されていた。 記事を読むと、これは…
▲ トレチャコフ美術館でもっとも人気のある「見知らぬ女」 昔、上野の東京都立美術館で開かれた「トレチャコフ美術展」をカミさんと見にいったことがある。 その日は雨の休日で、上野の森の新緑が雨に煙って濃い影をつくっていた。 美術館に入る前から、すで…
師走。 この年最後の月が来てしまった。 とはいえ、12月初頭は、まだ “晩秋” の気配が残っている。 年の瀬が近づく頃より、逆に、今の方が「一年の終わり」という空気感が漂う。 真冬になってしまえば、逆に、訪れる春に向かって、生命が待機状態に入っている…
「新型コロナウイルス」という人類がはじめて遭遇した未知の “病原体” との戦いが長引くにつれ、 「コロナとの戦いは、人間に何を教えようとしているのか?」 ということを考える機運が、あちらこちらで生まれている。 たとえば、人類がこれまでに残した過去…
フランス革命で命を散らした “悲劇の王妃” として、マリー・アントワネットの名前を知らない人は、まずいないと思う。 ▼ マリー・アントワネットの有名な肖像画 「民衆はパンが食べられなくて、みな困っています」 と侍従からの報告を受けたとき、 「それな…
ロシアの絵画というのは、古典絵画であろうとも、また近代絵画であろうとも、同時代のヨーロッパ絵画とは全く異なる世界観を持っている。 ヨーロッパでもなければ、アジアでもない。 「ユーラシア」という言葉が当てはまるのかどうかも、分からない。 とにか…
絵画批評フリードリッヒの描く異形の「自然」 カスパール・フリードリッヒの絵にはじめて接したのは、二十歳ぐらいの頃だった。 ひまに任せて、家にあった『芸術新潮』をめくっているときに、突然、衝撃的な絵が目に飛び込んできたのである。 荒れた岩山の向…
絵画批評 ゴッホとゴーギャン「2人のひまわり」 BS放送で『ゴッホとゴーギャン 2人のひまわり』という美術番組を観た。 2時間にわたる長編ドキュメンタリーであったが、退屈することなく、面白く鑑賞できた。 後に「天才」といわれた2人の画家の共同生活…
ネットをさまよっていたら、 「豊臣秀吉という人は、とっても芸術的なセンスに恵まれた人だ」 というようなことを書いているブログを、発見した。 秀吉 … 芸術? あまり、ありえない言葉の組み合わせに思えて、少し注意深く読んでみた。 なかなか面白い記事…
絵画批評日本の屏風絵の魔術 長谷川等伯や尾形光琳らの “屏風絵” について、何かひと言書きたいと思っていたのだが、鑑賞眼もないし、予備知識もないので、何も書けないままでいた。 でも、圧倒されるのだ。 いったい、こういう空間造形は、どういう精神から…
絵画批評ハンマースホイの「扉」 この1月21日(2020年)から3月26日まで、東京都美術館(台東区上野)で『ハマスホイとデンマーク絵画』展が開かれている。 ヴィルヘルム・ハマスホイ 昔は、「ハンマースホイ」といった。 最近日本語で表記するときには、「…
絵画批評マックスフィールド・パリッシュの絵 マックスフィールド・パリッシュという画家の絵が好きになったのは、1枚のアルバムジャケットがきっかけだった。 昔(20代半ば)、アメリカのサザン・ロックのアルバムを集めていた時期があって、『THE SOUTH'S…
絵画批評世界の裏側まで見通す「明晰な視界」 フェルメールの絵のなかでも、『真珠の耳飾りの少女』の次に人気があるといわれている『デルフトの眺望』。 しとやかな優しい光。 建物も運河の水面も、細部までくっきりと描かれることによって伝わってくる明晰…
映画批評大英帝国の誕生を絵画で表現した男 2014年イギリス・ドイツ・フランス合作映画原題「Mr. Turner」 日本公開 2015年6月 知的興奮を誘う傑作 美しい映画である。 主人公は、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー。 “人物事典” ふうにいうと、「18…
東京富士美術館(東京都・八王子市)で、『フランス絵画の精華』という展覧会が開かれている(2020年1月19日まで)。 フランス絵画のもっとも華やかな17世紀から19世紀の作品が集められており、 「ヴェルサイユ宮殿美術館、オルセー美術館、大英博物館、スコ…
絵画批評アメリカンコミックを “芸術” にした男 「ポップアート」というと、誰でもアンディー・ウォーホールの名前を思い浮かべる。 しかし、もう一人忘れてならないアーティストがいる。 ロイ・リキテンシュタインだ。 彼の制作した『ヘアリボンの少女』こ…
アート批評ジョルジョ・デ・キリコの形而上絵画 われわれは「イタリア」という言葉から、人間性を謳歌する享楽的で、現世的な文化風土を想像しがちである。 しかし、そのような「明るく陽気な」風土が広がるイタリアというのは、ローマ以南、ナポリやシチリ…
書籍紹介 藤田令伊・著 『フェルメール 静けさの謎を解く』 フェルメール人気はどのようにして生まれたのか? 17世紀のオランダの画家ヨハネス・フェルメールに対する人気は、近年「異常」といえるほど高い。 書店では、各種の解説本が出回っているし、美術…
絵画批評草原の孤独 彼女は何をしているのだろう。 茫漠と広がる草原に倒れたまま、上半身を起こし、丘の稜線に建つ家を眺めている女性がいる。 草原にたたずむ家は、彼女の家なのか。 それとも、見知らぬ人の家なのか。 画面に描かれた情景は、何のインフォ…
音楽・絵画評論音の抽象画 ウィンダム・ヒル 1980年代というと、日本では「バブルの熱狂」に覆われた時代というイメージがある。 しかし、今でこそそういう印象が強いが、少なくとも80年代が始まったとき、それはむしろ奇妙に冷えた時代が訪れたように思えた…
絵画・歴史批評 ナチス芸術の空虚さとメランコリー ナチス・ドイツの悪名高き総統アドルフ・ヒットラーが、もし青年時代に夢みていたとおり、「画家」としての人生を歩んでいたら、20世紀の歴史はどう変わっていただろうか。 それは、現代史に関心を持つ多く…
絵画批評キリストの教えを、「思想」として理解した男マタイ マタイはどこにいる? バロック時代のイタリア人画家カラヴァッジオが描いた『聖マタイの招命(しょうめい)』という絵には、後にキリストの弟子になるマタイという男が、キリストの要請に応じて…
絵画批評 人間はいつから「死」を恐れるようになったのか 絵画というものは、基礎的な知識がないと、理解できないものが多い。 特に、近代以前の古典的な西洋絵画の場合は、そこに登場する人物や情景を説明してくれる解説者がいないと、意味が伝わらないこと…
絵画批評『貧しき漁師』の豊かな詩情 昔、シャヴァンヌの『貧しき漁師』という絵を見て、とてつもなく感銘を受けたことがあった。 見たのはもちろん実物ではなく、美術書に掲載されたカラーグラビアでもなく、市販の日記帳の片隅に印刷された小さなモノクロ…
絵画批評 絵画史上まれなる恐ろしい絵 19世紀の画家ポール・ドラローシュの描いた「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、世にも恐ろしい絵である。 私がこの絵を見たのは、ちょうど30年前だ。 朝日新聞の日曜版に掲載されていた『世界 名画の旅』という連載…