アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

絵画

奥行きを失った絵が獲得したリアル感

絵画批評日本の屏風絵の魔術 長谷川等伯や尾形光琳らの “屏風絵” について、何かひと言書きたいと思っていたのだが、鑑賞眼もないし、予備知識もないので、何も書けないままでいた。 でも、圧倒されるのだ。 いったい、こういう空間造形は、どういう精神から…

ハマスホイ 『陽光習作』

絵画批評ハンマースホイの「扉」 この1月21日(2020年)から3月26日まで、東京都美術館(台東区上野)で『ハマスホイとデンマーク絵画』展が開かれている。 ヴィルヘルム・ハマスホイ 昔は、「ハンマースホイ」といった。 最近日本語で表記するときには、「…

楽園のファンタジーとメランコリー

絵画批評マックスフィールド・パリッシュの絵 マックスフィールド・パリッシュという画家の絵が好きになったのは、1枚のアルバムジャケットがきっかけだった。 昔(20代半ば)、アメリカのサザン・ロックのアルバムを集めていた時期があって、『THE SOUTH'S…

フェルメール『デルフトの眺望』

絵画批評世界の裏側まで見通す「明晰な視界」 フェルメールの絵のなかでも、『真珠の耳飾りの少女』の次に人気があるといわれている『デルフトの眺望』。 しとやかな優しい光。 建物も運河の水面も、細部までくっきりと描かれることによって伝わってくる明晰…

ターナー、光に愛を求めて

映画批評大英帝国の誕生を絵画で表現した男 2014年イギリス・ドイツ・フランス合作映画原題「Mr. Turner」 日本公開 2015年6月 知的興奮を誘う傑作 美しい映画である。 主人公は、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー。 “人物事典” ふうにいうと、「18…

『フランス絵画の精華』展

東京富士美術館(東京都・八王子市)で、『フランス絵画の精華』という展覧会が開かれている(2020年1月19日まで)。 フランス絵画のもっとも華やかな17世紀から19世紀の作品が集められており、 「ヴェルサイユ宮殿美術館、オルセー美術館、大英博物館、スコ…

リキテンシュタイン『ヘアリボンの少女』

絵画批評アメリカンコミックを “芸術” にした男 「ポップアート」というと、誰でもアンディー・ウォーホールの名前を思い浮かべる。 しかし、もう一人忘れてならないアーティストがいる。 ロイ・リキテンシュタインだ。 彼の制作した『ヘアリボンの少女』こ…

キリコ作『街の神秘と憂鬱』の謎

アート批評ジョルジョ・デ・キリコの形而上絵画 われわれは「イタリア」という言葉から、人間性を謳歌する享楽的で、現世的な文化風土を想像しがちである。 しかし、そのような「明るく陽気な」風土が広がるイタリアというのは、ローマ以南、ナポリやシチリ…

フェルメールの絵からこっそり消されたものは何か?

書籍紹介 藤田令伊・著 『フェルメール 静けさの謎を解く』 フェルメール人気はどのようにして生まれたのか? 17世紀のオランダの画家ヨハネス・フェルメールに対する人気は、近年「異常」といえるほど高い。 書店では、各種の解説本が出回っているし、美術…

ワイエス 『クリスティーナの世界』

絵画批評草原の孤独 彼女は何をしているのだろう。 茫漠と広がる草原に倒れたまま、上半身を起こし、丘の稜線に建つ家を眺めている女性がいる。 草原にたたずむ家は、彼女の家なのか。 それとも、見知らぬ人の家なのか。 画面に描かれた情景は、何のインフォ…

ウィンダム・ヒル サウンドの静けさの秘密   

音楽・絵画評論音の抽象画 ウィンダム・ヒル 1980年代というと、日本では「バブルの熱狂」に覆われた時代というイメージがある。 しかし、今でこそそういう印象が強いが、少なくとも80年代が始まったとき、それはむしろ奇妙に冷えた時代が訪れたように思えた…

ヒトラーの愛した芸術の正体

絵画・歴史批評 ナチス芸術の空虚さとメランコリー ナチス・ドイツの悪名高き総統アドルフ・ヒットラーが、もし青年時代に夢みていたとおり、「画家」としての人生を歩んでいたら、20世紀の歴史はどう変わっていただろうか。 それは、現代史に関心を持つ多く…

カラヴァッジオ 『聖マタイの招命』

絵画批評キリストの教えを、「思想」として理解した男マタイ マタイはどこにいる? バロック時代のイタリア人画家カラヴァッジオが描いた『聖マタイの招命(しょうめい)』という絵には、後にキリストの弟子になるマタイという男が、キリストの要請に応じて…

二コラ・プッサン『アルカディアの牧人たち』 

絵画批評 人間はいつから「死」を恐れるようになったのか 絵画というものは、基礎的な知識がないと、理解できないものが多い。 特に、近代以前の古典的な西洋絵画の場合は、そこに登場する人物や情景を説明してくれる解説者がいないと、意味が伝わらないこと…

ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ『貧しき漁夫』

絵画批評『貧しき漁師』の豊かな詩情 昔、シャヴァンヌの『貧しき漁師』という絵を見て、とてつもなく感銘を受けたことがあった。 見たのはもちろん実物ではなく、美術書に掲載されたカラーグラビアでもなく、市販の日記帳の片隅に印刷された小さなモノクロ…

ポール・ドラローシュ 『レディ・ジェーン・グレイの処刑』

絵画批評 絵画史上まれなる恐ろしい絵 19世紀の画家ポール・ドラローシュの描いた「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、世にも恐ろしい絵である。 私がこの絵を見たのは、ちょうど30年前だ。 朝日新聞の日曜版に掲載されていた『世界 名画の旅』という連載…

ハイテク時代のオランダを描いたフェルメール

ヨハネス・フェルメールとは編集 Johannes Vermeer ヨハネス・フェルメール(1632年-1675年)は17世紀オランダ、フランドル派の画家。本名をヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト(Jan van der Meer van Delft)という。 旅館の経営をおこなう一方…

退屈な天国、楽しい地獄 (ボッシュの絵画)

絵画批評 トルストイの小説(『アンナ・カレーニナ』)に、 「幸福な家庭はみな同じように似ているが、不幸はそれぞれの家ごとに違う」 という言葉がある。 もちろん、お互いに似通っていようが 「幸福な家庭」 の方がいいに決まっている。しかし、逆にいえ…

ベックリン 「死の島」の真実

絵画批評 誰でも、一度は見たことのある絵かもしれない。 アルノルト・ベックリンの描いた『死の島』。 不吉なタイトルだが、ベックリン自身が名付けた名前ではない。 彼がフィレンツェにいた頃、若くして夫を亡くしたある婦人から、 「夫を偲ぶときに夢想す…

ピエール・ボナール『黄昏』

絵画批評 昨年(2018年)の秋から冬にかけて、国立新美術館でフランスの画家ピエール・ボナールの展覧会が開催された。 同じ時期に、ムンク展、フェルメール展、ルーベンス展なども開かれ、マスメディアにも紹介されて話題を呼んだ。 それらの巨匠たちと比べ…

月天心貧しき町を通りけり

絵画・文芸批評 与謝蕪村(よさ・ぶそん)の有名な俳句の一つに、 「月天心(つきてんしん)貧しき町を 通りけり」 という句がある。 「月が、空の真ん中(天心)に輝いている貧しい町を、いま私は通り過ぎようとしている」 という意味だ。 「つきてんしん」…

ジュリアン・オピーのスーパーフラット画法

絵画批評 ジュリアン・オピーを語る もう、そうとう昔の話になるけれど、会社のパソコンのファイルの底に、「TURBO FREEWAY(TF way)」というゲームソフトが眠っているのを発見したことがある。 自動車レースのゲームだった。 といっても、サーキットではな…