アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

評論

庄野潤三の小説に流れる不思議な空気感

庄野潤三の短編集『プールサイド小景・静物』(新潮文庫)を買った。 収録されていた七つの短編にはそれぞれ独特の空気があって、どれも不思議な気分にさせられた。 どの作品も、昭和25年(1950年)から昭和35年(1960年)までの間に書かれたものである。 芥…

ロシア人が「プーチン幻想」から覚める日

ここ一ヶ月ほど、全世界のテレビ、新聞、雑誌、SNSなどを通じて一番連呼された人の名前は、 「プーチン」 ではなかろうか。 なにしろ、この名前の露出度は、ここ3ヶ月ほど群を抜いている。 政治家としてはバイデン、トランプ、習近平、金正恩などというビッ…

言葉にならないもの(柄谷行人について)

柄谷行人(からたに・こうじん)という批評家の本について、以前にも書いたことがあったが、そのなかの『意味という病』(1975年)という本をもう一度取り上げてみたい。 この著作は、シェークスピアの『マクベス』を論じた「意味に憑かれた人間」を中心に構…

オウム真理教とは何だったのか? (2)

※ 前回のブログ ↓ (2022年3月24日)の続き オウムの教義は資本主義のメカニズムをなぞった オウムの元信者たちのインタビューで構成された『約束された場所で』(1998年刊)という本で、著者の村上春樹は、オウム信者たちの奇妙な平板さに貫かれた精神に違…

オウム真理教とは何だったのか? (1)

村上春樹とオウム信者の対談 27年前、オウム真理教という宗教が当時の若者たちを惹きつけた理由は何だったのか。 小説家の村上春樹は、オウムの元信者たちにインタビューした『約束された場所で』(1998年刊 写真上)という書物で、オウムに関わった人々の精…

オウムのチープな教義を笑えるか?

「地下鉄サリン事件」が起こって、27年経った。 といっても、若い世代では事件そのものを知らない人も多いかもしれない。 1995年(平成7年)3月20日。 東京メトロの地下鉄車両内で発生した同時多発テロで、宗教団体のオウム真理教が地下鉄車両に神経ガスのサ…

プーチンのウクライナ侵攻は「気候変動」説で説明できる?

ロシアのプーチン大統領は、なぜウクライナへの侵攻を始めたのか。 それに関しては、 ① プーチンがNATOの東方拡大を恐れたから。 ② 彼がロシア帝国の復活という野望をいだいたから。 ③ ウクライナにいた親ロシア系住民を、ウクライナのネオナチ勢力が大量虐…

柄谷行人の初期文芸評論三部作

自分の生き方にふと迷いが生じたり、思考が行き詰まったり、周りの状況が霧に包まれてきたように感じられたときは、必ず読み返す本がある。 『畏怖する人間』(1972年) 『意味という病』(1975年) 『マルクスその可能性の中心』(1978年) の3冊だ。 著者…

義経は遊牧民のメンタリティーを持っていた

この1月に始まった大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。 NHKは総力戦で番宣に臨んでいる。 同局は、BSを含めるとたくさんの歴史番組を持っているが、そこで取り上げられたテーマの大半は鎌倉武士たちの話だ。 たとえば、BSプレミアム「英雄たちの選択」のタイトル…

「鎌倉殿の13人」好スタート

NHKの新・大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、まぁまぁのスタートを切ったようである。 ネットニュースなどを見ていると、初回の視聴率も17.3%と上々。 視聴者の声も好意的な意見が多数を占めていた。 実際、見ていた私も、「面白い」と思った。 さすが三谷幸喜…

情報としての価値を帯びてきた「ノイズ」という言葉

「ノイズ」という言葉が、時代のキーワードになりそうな気配がある。 単純に訳すと、「雑音」。 つまり、耳障りで不快な音。 しかし、街中に氾濫するその「ノイズ」を集めて楽曲をつくるアーティストがいるという。 「VIDEO TAPE MUSIC」さん(下 38歳)。 …

攻撃型人間(橋下徹)の時代が終わる

「論破」を重んじる橋下徹氏が飽きられてきた? 朝のワイドショーを見ていると、必ずどこかのチャンネルで橋下徹氏の顔を見る。 橋下氏が出る番組に被せられるタイトルは、ほとんど、 「橋下徹が、〇〇を切る!」 「橋下徹が、〇〇に喝!」 とか、 「橋下徹…

“9・11” という悪夢

ハイジャックされた旅客機が、アメリカのワールド・トレード・センター(世界貿易センタービル)に突入し、旅客機の乗客と実行犯、および倒壊したビルで働いていた関係者2,977人が死亡した2001年の「アメリカ同時多発テロ」。 一般的に、「9・11」といわれる…

司馬遼太郎に洗脳された日本人 … だってよ

近頃、いろいろな方のブログを拝読していると、広告の掲載欄を残しているものに、次のような広告を見る機会が増えた。 「司馬遼太郎に洗脳された日本人」 「司馬遼太郎の日本史」の罠 一般人のブログのみならず、有名ブロガーとしてネットに多くの読者を持つ…

リベラルとは何か

萱野稔人(かやの・としひと)著『リベラリズムの終わり その限界と未来』(2019年11月20日 幻冬舎新書)の感想 惜しい本である。 「狙い」はいいと思った。 しかし、結論を急ぎ過ぎたのか、なんとも消化不良を起こしたまま発行されてしまった本という気がす…

分断社会の心理学

アメリカの大統領選にほぼ決着がつき、トランプ氏やバイデン氏の報道も、もう日本のニュースではほとんど流れなくなった。 しかし、選挙の騒動から一ヶ月が過ぎ、ようやく見えてきたものがある。 それは、アメリカ社会に広がった「分断」の予想外の深さだ。 …

三島由紀夫 没後50年

作家の三島由紀夫が、自衛隊の市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げた事件(1970年11月)から、今年で50年経つ。 それにちなんで、テレビも含め、いろいろなメディアで三島の生前の功績やあの事件の意味を問うような企画が続いた。 昨日の夜、その一つであるEテレの…

議論大歓迎!

トランプ的 “反知性主義” を語った当ブログに対する読者からの反論 下に紹介するのは、11月8日に私が掲載したブログ記事(「アメリカ社会の『分断』とは何か」)に対して、「タカ」さんと名乗る方から寄せられたご意見である。 この方とは、すでに過去2回…

AKB48が社会現象だった時代

2020年度NHKの紅白歌合戦の出場者が発表されたが、昨年まで12年連続出場していたAKB48が選考から落ちた。 櫻坂46、乃木坂46、日向坂46などは出場するらしいが、なんといっても、その手のガールズユニットの頂点に立っていたAKBが「紅白」に出ないということ…

アメリカ社会の「分断」とは何か?

日本時間の2020年11月7日(土)未明、アメリカの大統領選は、バイデン氏の勝利で終わった。 しかし、トランプ氏が負けを認めず、法廷闘争に持ち込もうとしているので、これから何が起こるのか、あいかわらず不透明な部分が消えない。 それはともかく、これ…

マルクスの『資本論』が再びブーム?

若者たちの『資本論』研究の背景にあるもの 今年になってから、若い学者たちの間で、マルクスの『資本論』を再評価する活動が盛んになっている。 今年の4月には、白井聡氏(43歳 京都精華大学教員)の『武器としての「資本論」』が出版され、かなりの話題を…

コロナ禍で解く『風の谷のナウシカ』

「新型コロナウイルス」という人類がはじめて遭遇した未知の “病原体” との戦いが長引くにつれ、 「コロナとの戦いは、人間に何を教えようとしているのか?」 ということを考える機運が、あちらこちらで生まれている。 たとえば、人類がこれまでに残した過去…

サラリーマンたちが演じる“やくざ映画”『半沢直樹』

やっぱ『半沢直樹』は面白いわ。 7月27日(日)に放映された第二話の視聴率は22.1%だったという。 私は、この視聴率がどれほど高いものなのかはよく分からないが、NHKがしきりに番宣を繰り返す大河ドラマ『麒麟がくる』の平均視聴率が15~16%台だというい…

7月のテレビ番組雑感

パソコンの調子が悪い。 … ということを、ブログの更新が途絶えた “言い訳” にするつもりもないのだが、テキストを入力したり、画像検索をしている途中で、モニターが突然ブラックアウトしてしまう。 原因は分からず。 ただ、強制終了するか、電源を一時的に…

『雲霧仁左衛門』と「陰翳礼讃」的な日本美学

NHK総合の「土曜時代ドラマ」枠で放映されている『雲霧仁左衛門』が楽しみになった。 ハードディスクに録画し、のんびりできる時間を見つけて、ゆっくり見ている。 もとは、BSプレミアムで、2013年から放送されていたものらしい。 いま流れているのは、その…

誰か『ワンピース』の面白さを教えてよ

BSのWOWOWシネマで、『ONE PIECE(ワンピース)』の劇場版アニメを延々と放映していた。 コロナ禍のせいか、最近のWOWOWシネマは、ステイホーム中の “子供&若者” 向けの企画ばかりで、私のような年寄りにはまったく面白くないのだけれど、そういうときに、1…

オリジナリティなど要らないとホリエモンは言った

誰でも、オリジナリティというものに生き甲斐を感じている。 作家や映画監督のように、創りだした作品そのものが、作者のオリジナリティを訴えるものとして評価されるような仕事もあるが、そんな大それたものでなくても、「俺しかできない仕事だ」と思える部…

貨幣のいたずらに人間は悩みかつ魅せられる

「岩井克人『欲望の貨幣論』を語る」について 「貨幣」とは何か? 誰にとっても自明な存在である “おカネ” というものは、実は人類がなかなか究明しきれない謎のかたまりであるそうな。 人々がおカネを欲しがるのは、どういう理由なのか? こんなバカげた質…

『松田聖子と中森明菜』80年代歌姫たちの対決

この2020年4月に、松田聖子はデビュー40周年を迎えたという。 40年前といえば、1980年。 山口百恵が引退して、日本の女性アイドルが変った年だ。 この1980年という年は、アイドルが変わっただけではなかった。 時代そのものが変化し始めていた。 その変化を…

カンブリア紀に栄えた恐怖の大魔王

最大・最強生物アノマロカリス 落ち込んでいるときは、古生物の話なんかにうつつを抜かしていると、癒される。 昔、「肺血栓症」の様態が安定するまで、病院の入退院を繰り返したり、家に閉じこもって安静を保った時期があった。 今のコロナ禍における「ステ…