アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

評論

オリジナリティなど要らないとホリエモンは言った

誰でも、オリジナリティというものに生き甲斐を感じている。 作家や映画監督のように、創りだした作品そのものが、作者のオリジナリティを訴えるものとして評価されるような仕事もあるが、そんな大それたものでなくても、「俺しかできない仕事だ」と思える部…

貨幣のいたずらに人間は悩みかつ魅せられる

「岩井克人『欲望の貨幣論』を語る」について 「貨幣」とは何か? 誰にとっても自明な存在である “おカネ” というものは、実は人類がなかなか究明しきれない謎のかたまりであるそうな。 人々がおカネを欲しがるのは、どういう理由なのか? こんなバカげた質…

『松田聖子と中森明菜』80年代歌姫たちの対決

この2020年4月に、松田聖子はデビュー40周年を迎えたという。 40年前といえば、1980年。 山口百恵が引退して、日本の女性アイドルが変った年だ。 この1980年という年は、アイドルが変わっただけではなかった。 時代そのものが変化し始めていた。 その変化を…

カンブリア紀に栄えた恐怖の大魔王

最大・最強生物アノマロカリス 落ち込んでいるときは、古生物の話なんかにうつつを抜かしていると、癒される。 昔、「肺血栓症」の様態が安定するまで、病院の入退院を繰り返したり、家に閉じこもって安静を保った時期があった。 今のコロナ禍における「ステ…

なぜいまだに“昭和的なるもの”が話題になるのか?

平成が終わろうとしていたころ、「今の若者が昭和歌謡に夢中 … 」みたいな情報がマスコミに流れていたことがあった。 そのころ、ふと思ったことがあった。 そういう若者たちが、「昭和」という言葉からイメージしているものって、いったい何なのだろう? 「…

『資本論』は優れたエンターテイメントである

ここのところ、「資本主義」をテーマにしたブログ記事をやたら書いている。 新型コロナウイルスによって、各国の経済活動が “鎖国状態” に入り、グローバル資本主義に急ブレーキがかかったように見えてきたからだ。 そういう状況下では、法政大学の水野和夫…

資本主義は「煩悩」を全面開花させる

書評水野和夫 著 『資本主義がわかる本棚』 いま我々が暮らしている社会は、「資本主義社会」と呼ばれる社会である。 それがどんな社会かというと、「煩悩(ぼんのう)」をかぎりなく肯定していく社会といっていい。 「煩悩」とは仏教用語で、「人の苦の原因…

ドラマ『野ブタ … 』は何を訴えていたのか?

ネットニュースの「文春オンライン」(2020年5月16日)で、霜田明寛さんというライターが、15年ぶりに再放送されている『野ブタ。をプロデュース』が、なぜ今の時代に大反響を呼び起こしているのか? … ということを分析されていた。 私は、当時そのドラマを…

ソウル・ミュージック解説本の名著

高校生の頃、自分の好きな音楽が変った。 1960年代後半のことである。 それまでは、同じ年ぐらいの仲間と同じように、「ロック」と呼ばれる白人系の洋楽を聞いていた。 ビートルズやローリング・ストーンズというビッグネームはもちろん、クリーム、レッド・…

吉本隆明に対する二度目の挫折

合田正人氏の書いた『吉本隆明と柄谷行人』(PHP新書)という本を読んだ。 この二人の思想家の名前は、若い頃に人文系思想書に没頭したシニア世代なら、忘れられない名前かもしれない。 著者の合田氏がまさにその一人であるようだ。 「1975年に大学に入学し…

モノクロ画像による大人の写真集

写真評論エルンスケン 『セーヌ左岸の恋』 「大人」というのは、年齢のことではなく、文化概念である。 「ビールの苦さが分かるようになれば、大人だ」 などとよく言うけれど、ビールは子供が飲んでも、大人が飲んでも苦いことには変わりない。 しかし、その…

巣ごもり期間は『銃・病原菌・鉄』を読め!

新型コロナウイルスの感染拡大のせいで、カミュの『ペスト』が書店で売れているという。 『異邦人』などの有名な著書に隠れて比較的地味な扱いを受けていた本だが、緊急事態宣言が発令され、自宅待機を余儀なくされた人たちが読書に関心を向けたという理由も…

村上春樹はもうノーベル賞を取れない

毎年この季節になると、村上春樹がノーベル文学賞を取るかどうかという話題がメディアに採り上げられるが、今年もそれは叶わなかった。 毎度のことなので、“ハルキスト” と呼ばれるファン層の落胆ぶりもそれほど話題にならなかった。 たぶん多くの日本人は分…

カントリーミュージックからアメリカを読む

10代の頃からずっと洋楽を聞き続けて、60年以上経つ。 1960年代初頭のコニー・フランシスやニール・セダカのようなアメリカンポップスに始まり、ビートルズ、ストーンズ、さらにはクリーム、レッドツェッペリンというUKロックに移行し、その後はアメリカのソ…

日本人の心を劇的に変えた「平成」

今週のお題「平成を振り返る」 昭和的な幸福感と決別した時代 平成という時代は、一言でいうと、世界経済のグローバル化に翻弄され、昭和の時代に日本が蓄えたさまざまな資産をすべて喪失した時代だったといえる。 劇作家の宮沢章夫によると、 「(平成は)…

「コミュ力」という言葉の軽さ  

前回のブログで、 「平成という時代は、コスパ思想が席巻した時代だった」 という内容の記事を書いたが、実はもうひとつ、「平成」の精神風景を語るときに無視できない概念がある。 それが、「コミュ力」という言葉だ。 平成という時代は、老いも若きも「コ…

コスパ思想で始まり、そして終わった「平成」

新しい元号が発表になって、いよいよ「平成」という時代も、あと1ヵ月を切るようになったが、そのせいか、テレビなどでは「平成」という時代を事件や歌で振り返る番組が増えた。 「平成」とはどんな時代であったか? 私が思うに、「平成」という時代は、“コ…

「人間」という思想は “砂漠” で生まれた

評論イエス・キリストはいかにして「人間」を発見したか? 1960年代ぐらいまでは、人間の精神活動の主要テーマは「思想(イデオロギー)」という言葉を中心に回っていた。 それは、アメリカの「自由主義」と、ソ連の「社会主義」という二つのイデオロギーが…