東日本大震災が起きて、10年経った。 地震が始まったとき(3月11日の14時46分)、私は北関東のキャンピングカー販売店で、新型車の取材をしていた。 その場所が震源地に近かったせいもあり、10年経った今も、そのときの記憶は鮮明によみがえってくる。 野外…
人間の舌が感じる “味” というのは、なかなか微妙なものである。 うまいモノはうまい。 まずいモノはまずい。 … のだけれど、 「まずいもの」+「まずいもの」 = うまい! ということが起こりうるのだ。 実は、ある中華食堂の話。 学生の頃、夏休みの間だけ…
ある日どこかで 「名画」とは何か? この言葉が意味するものには、絵画と映画の両方があるが、とりあえず映画における「名画」を考えてみる。 感動を得られたもの。 深い印象を与えてくれたもの。 無類に面白かったもの。 …… などなど、「名画」といわれる映…
処女航海/リターン・トゥ・フォーエバー この世には、物理的にも理念的にも、人間がたどり着くことのできない領域というものがある。そこから先は、人間が足を踏み入れてはならないと思わせるような “場所” がある。 そういう “場所” を、仮に「この世の果…
鹿児島独り旅 前回「薩摩示現流」の記事を書いたが、そのときに体験した鹿児島旅行の思い出を、もう少し綴る。 そのときにも書いたが、この旅行は、CAR雑誌に掲載する “ドライブガイド” の取材が目的だった。 一応、記事にするべきものをあらかた取材して、…
司馬遼太郎さんの幕末小説を読んでいると、「薩摩示現流(さつまじげんりゅう)」という言葉によく出くわす。 『新撰組血風録』 『燃えよ剣』 『竜馬がゆく』 『跳ぶが如く』 こういう作品群では、必ず「示現流」という剣術の話が紹介される。 NHKの大河ドラ…
バルチック艦隊の悲劇 司馬遼太郎の『坂の上の雲』は、日本近代史を深堀りする画期的な名著の一つに数えられるが、私が読んでいちばん記憶に残っているのは、意外にも、“敵国” として描かれたロシア軍の記録なのだ。 なかでも、バルチック艦隊の悲劇は、魂を…
近頃、いろいろな方のブログを拝読していると、広告の掲載欄を残しているものに、次のような広告を見る機会が増えた。 「司馬遼太郎に洗脳された日本人」 「司馬遼太郎の日本史」の罠 一般人のブログのみならず、有名ブロガーとしてネットに多くの読者を持つ…
▲ ピーター・ブリューゲルの『バベルの塔』 人間は、塔が好きだ。 古くは、旧約聖書の「バベルの塔」(← 本当にあったかは不明)に始まり、エッフェル塔やら、東京タワーやら、東京スカイツリーやら、ドバイのプルジェ・ハリファやら …… 。 何のためか、よく…
祝祭(ダイヤモンド)と死(灰) 『灰とダイヤモンド』という言葉から、今の人たちは何を想いうかべるのだろうか。 2013年に、ももいろクローバーZがリリースしたアルバムの中に、そういうタイトルの歌があるという。 1994年までさかのぼれば、日本のロック…
NHKのBSプレミアムで、面白い企画が放映されていた。 昨年の暮れだったか、今年の初頭だったか。 見た日付は忘れたが、興味深い内容だった。 どんな話か? 人間の目には、他の動物とは違った不思議な “機能” が隠されているというのだ。 つまり、ヒトは、現…
昔、… 私が小学生だった頃(もう50年以上も前の話だ)、学校の健康診断に「色盲(しきもう)検査」という項目があった。 「色の識別が正しくできているかどうか」ということを検査するもので、“正常” とみなされない時には、「色盲」という(差別的な)診断…
AI が人間を裏切る日は来るのか? BSのWOWOWで、入江悠監督の『AI 崩壊』(2020年1月31日公開)を見る。 AI が、医療現場から交通システムに至るまで、国民のすべての生活をコントロールするようになった2030年の日本の姿を描いた映画だ。 そのAI が、人間に…
元アメリカ大統領のトランプ氏が、新大統領のバイデン氏にホワイトハウスを明け渡したことによって、ようやくバイデン新体制がスタートした。 この間、アメリカと日本のメディアは、「アメリカ社会の分断」という視点で、数々の問題が積み残されていると指摘…
監視社会の中で生きるのは 幸福なのか悪夢なのか 1998年に制作されたピーター・ウィアー監督、ジム・キャリー主演のアメリカ映画。 『トゥルーマン・ショー』 2021年1月16日に、BSのWOWOWシネマで鑑賞。 封切り時に映画館で見たわけではないが、過去にテレ…
政治や社会における昨今のメディアの報道を見ていると、第二次大戦後、欧米を中心に尊重されてきた「民主主義」という政治理念が、ついに制度疲労を起こしてきたのではないか? と指摘する論調があまりにも増えてきたような気がする。 その一つの例が、昨年…
最近のテレビを見ていると、ネコが出てくるCMや、ネコのドキュメント映像がやたら目につく。 人間はいったいネコのどこに惹かれるようになったのか? まず、顔がかわいい。 … と思う人が多いようだ。 これにはちゃんと理由がある。 2020年の12月25日に、NHK…
いよいよ、今年もあと2日を残すばかり。 やっぱり、この時期は、なんとなく酒が恋しくなる。 コロナ禍のことでもあるので、家の中で、家族とか、本当に気の合った人間と過ぎ行く一年を振り返りつつ、お互いに照れながら、「俺たち老けたなぁ … 」とか笑って…
絵を紹介した記事のタイトルが、上のものだった。 すなわち、「これが、太郎なのか」 朝日新聞2020年12月8日(火)の夕刊の記事だ。 その新聞の2ページ目。 「美の履歴書」と題された美術品紹介コーナーに、この絵が掲載されていた。 記事を読むと、これは…
2020年の年末、BS放送のWOWOWで、深作欣二の『仁義なき戦い』シリーズ全5作をまとめて特集していた。 全部、録画して、久しぶりにじっくり見た。 やっぱり、いい映画だ! 面白い! … と思ったけれど、昔映画館で見ていたときと何かが違う。 ふと気づくと、…
クリスマスですねぇ。 小さい頃は、けっこう胸がときめいたりしましたが…。 今じゃ、365日のうちの、ただの1日ですなぁ。 昔は、それでも人並みに、子供のためにプレゼントなんか買ってたんですけどね。 クリスマス サンタを辞めて 50年 「バブル」とかいう…
人生のピンチは、何の前触れもなく、突然やってくる。 「なんでこんなときに?」 「なんで俺が?」 … みたいな不条理感をともなって、ピンチは、人の不幸に舌なめずりをする死の女神のように、足音も立てず、気がつくと、ひっそりと隣りにたたずんでいるのだ…
狭い階段を降りると、素っ気ない木の扉。 扉の上には、古めかしいネオン管のイルミネーション。 『 RUMI 』 この季節、扉の前に立っただけで、その奥から歌声や喧騒が響いてきたというのに、今日はやけに静まり返っている。 … どんな顔をして入ればいいのか…
▲ トレチャコフ美術館でもっとも人気のある「見知らぬ女」 昔、上野の東京都立美術館で開かれた「トレチャコフ美術展」をカミさんと見にいったことがある。 その日は雨の休日で、上野の森の新緑が雨に煙って濃い影をつくっていた。 美術館に入る前から、すで…
こんな悲しい別れの歌って、ほかにあるのだろうか? 『外は白い雪の夜』。 この季節になると、必ず思い出す歌のひとつだ。 作曲は吉田拓郎。 作詞は松本隆。 この歌が発表されたのは、1978年。 私は20代半ばだった。 しかし、当時、私はこの歌をリアルタイム…
夕食を食いながら、テレビで「日本作詞家大賞」の選考会を兼ねた歌番組を観ていた。 大半が演歌である。 テロップに流れる歌詞だけ眺めていると、どれもたいしたことのない詞に思える。 ありきたりの言葉だけが連なる何のヒネリもない詞ばかり。 …… と思って…
「驟雨」という言葉がある。 「しゅうう」と読む。 にわか雨、それも糸のような淡い走り雨のことをいう。 この言葉を覚えたのは、吉行淳之介の短編『驟雨』を読んでからである。 小説のテーマは、娼婦とその客との間に繰り広げられる淡い恋愛ドラマだ。 たぶ…
萱野稔人(かやの・としひと)著『リベラリズムの終わり その限界と未来』(2019年11月20日 幻冬舎新書)の感想 惜しい本である。 「狙い」はいいと思った。 しかし、結論を急ぎ過ぎたのか、なんとも消化不良を起こしたまま発行されてしまった本という気がす…
テレビの刑事ドラマなどを観ていると、よく「捜査一課」という言葉が出てくる。 警察官が主人公になるドラマでは、この「捜査一課」と名乗る刑事の方が、普通の刑事よりもカッコいい場合が多い。 聞き込み調査をするときも、定期入れみたいなものをヒラヒラ…