アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

追憶

冷たいバラード

「櫛(くし)を拾うと、つき合っている人と別れることになると、昔の人はよく言ったわ」 そう言って、女は喫茶店のシートに置き忘れられた誰かの櫛を、そっと自分のバッグにしまい込んだ。 半月形の古風な木の櫛だった。 アメ色に染まって、べっ甲のようにも…

七歳までは神の内

一番最初にお化けを見たのは、3歳ぐらいのときだった。 いま住んでいる町に越してくる前。 古びた町の古い一軒屋の中で、両親と伯母と4人で暮らしていた頃だ。 一軒屋といっても、今の感覚でいえばスラム街のバラック。 柱はみな黒塗りながらハゲだらけ。…

平成最後に「場末」を眺める

「場末」って、好きだ。 BASUE …… 今、この言葉はどれほどまで機能しているんだろうか。 ひょっとして、もう「死語」なのかな。 若い人は、もうこういう言葉を知らないんじゃないか? 「街の中でも、目抜き通りから少し外れた、さびれた場所」 … っていうよ…

占い師の裏話 

自分は占いを信じるタイプか? そう自分自身に問うてみると、若いときは、けっこう占いの結果にこだわる人間だった。 受験の失敗、失恋 … 。 先行きに暗雲が立ち込めてくるようなときは、雑誌の片隅に掲載された星占いの結果ですら、ものすごく重要なメッセ…

春という季節は亡くなった人を妙に思い出す

エッセイ 伯父さんの話 伯父がいた。 その妹である母の話によると、きっぷのいい遊び人だったという。 「きっぷのいい」という言葉は死語かもしれない。 現代風に言うと、「気性のさっぱりした」というような意味になるのだろうか。 母は、その言葉を、半分…

1978年に女の歌が変わった

エッセイ 男から脱出した女たち 昭和歌謡を振り返ってみると、女性シンガーの歌が途中からガラっと変わる時期がある。 1970年代の後半あたりからだ。 女たちが、自分の正直な気持ちを歌い始めたといっていい。 たとえば、杏里の『オリビアを聴きながら』。 …

アフロヘア・ガール

めちゃめちゃに、ブラックミュージックに凝っていた時期があった。 20代のはじめの話だ。 大学は卒業したけれど、職がなくて、アルバイトをやっていた。 イタリアンレストランだったが、ハンバーグもカレーもあるっていう店。 1階と2階に分かれていて、2…

卒業 ―― 高校三年生

今週のお題「卒業」 「卒業」という言葉から受け取るイメージは、世代によってずいぶん異なるように思える。 それをテーマにした歌ともなれば、多くの日本人が思い浮かべるのは、まずユーミンの『卒業写真』であったり、海援隊の『贈る言葉』だったり、森山…

映画の話題で知り合った女性

エッセイ・追憶・映画ウッディ・アレン『マンハッタン』 ウッディ・アレンが監督を務め、かつ主演を張った『マンハッタン』が公開されたのは、1979年だった。 公開前から、このクィーンズボロー・ブリッジのベンチの写真が色々な媒体で紹介されていて、それ…

OLDMAN

OLD MAN オールドマン 午後のスタンドカフェで、ぽつねんと、外の景色を見ている老人がいた。 喫煙席だった。 人がまばらに座った客席から、いく筋かの紫煙がのぼっていた。 老人はタバコを吸わないようだ。 喫煙席には、間違えて入ってきたのかもしれない。…

さびしくも美しいラクダのパラダイス

幻の遊園地「白子ラクダの国」 テーマパークというと、誰でも真っ先に浦安の「東京ディズニーランド」や、大阪の「ユニバーサルスタジオ」などを思い浮かべるはずだ。 その二つは、それぞれ人気もあり、集客力もすごい。 ドキドキ、ワクワク、ルンルン。 華…