アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

追憶

ジャズはいつだって大人の音楽

昔から、ジャズを聞いていると、いつも「大人の音」というイメージを持つことが多かった。 その気分を伝えるためのうまい言葉がなかなか見つからない。 強いていえば、大人の切なさ、大人の粋さ、大人のカッコよさ、大人のずるさといったものが、モヤモヤと…

歌声喫茶

「歌声喫茶」という喫茶店がある。 ロシア民謡とか昔の小学唱歌のような歌を、店に居合わせたお客たちが一斉に合唱する喫茶店のことだ。 ▼ 「歌声喫茶」 BSフジ『昭和は輝いていた』より そういう店が都内にもたくさんあるという話を聞いたのは、50年以上も…

山のクリスマス

山のクリスマス もうとっくに死んじゃったけど、俺のオフクロは、無類にクリスマスが好きだった。 戦争を体験して、物資の少ない時代を知ってた人だから、モノを大切にしていた。 だから、なんかのときに手に入れた、クリスマス用のきれいな赤い包装紙を毎年…

映画『拳銃の報酬』

9歳のときに観た「拳銃の報酬」の衝撃 小さい頃、何度か親父に映画に連れていったもらったことがある。 しかし、記憶に残っているのは、この一本しかない。 『拳銃の報酬』(1959年) 私が小学3年生のときのことだ。 映画の原題は、「ODDS AGAINST TOMORROW…

南にある大人の恋の国

鹿児島独り旅 前回「薩摩示現流」の記事を書いたが、そのときに体験した鹿児島旅行の思い出を、もう少し綴る。 そのときにも書いたが、この旅行は、CAR雑誌に掲載する “ドライブガイド” の取材が目的だった。 一応、記事にするべきものをあらかた取材して、…

禁断の風景

キャンピングカーでいろいろな所に泊まっていると、ときどき、 「あ、ここは人間が近づいてはならないところだ … 」 と思えるような場所にたどり着くことがある。 最近はもっぱらキャンプ場かRVパーク、高速のSA,PAで泊まることが多いので、そういう場所に…

自己啓発ビジネスを信じていない

30年ぐらい前だろうか。 会社勤めをしていた頃に、一度ヘッドハンティングされかかったことがあった。 マーケティングの会社だったか、コンサルティング会社だったか。 要は、ビジネスのアイデアを出して食べていく会社だった。 仲介したのは、学生時代につ…

親父と酒を飲んだ日

親父と一緒に酒を飲んだことは1回しかない。 いや、本当はもう少しあるのかもしれないが、記憶に残る酒は、1回だけだ。 もともと親父は、酒をほとんど飲まない。 ビールをコップ一杯飲めば、それだけで顔を赤くし、後は、唇を湿らせる程度にコップの縁をな…

SOULコンサートにおけるコール&レスポンス

最近のニュースを見ていると、アメリカにおける黒人と白人の人種対立が激化している様子が伝わってくる。 黒人音楽を通じて黒人文化に親しみを感じてきた私には辛い話だが、今回のコロナ禍が、黒人と白人の労働環境の違いを浮き彫りにしてしまったような気が…

ビルの谷間の空海

会社勤めをしていた頃、いちばん忙しいときは、土日も会社に泊まり込んでいた。 ある日曜日、会社を離れて街に出たときの情景を、今でも思い出すことがある。 何年前のことか忘れた。 ただ、画像を焼くCD-Rが切れたので、それを買うために、昼食を兼ねて外に…

なぜいまだに“昭和的なるもの”が話題になるのか?

平成が終わろうとしていたころ、「今の若者が昭和歌謡に夢中 … 」みたいな情報がマスコミに流れていたことがあった。 そのころ、ふと思ったことがあった。 そういう若者たちが、「昭和」という言葉からイメージしているものって、いったい何なのだろう? 「…

石原裕次郎はどういう人たちのスターだったのか?

今回の話は、年齢的にいうと、70歳ぐらいのシニア層を対象としたテーマである。 つまり、“裕次郎スナック” というものに行ったときの印象記だ。 もちろん、そんな名前のスナックがあるわけはないのだけれど、そこのママさんが若い頃から熱狂的な石原裕次郎の…

ドラクエという傑作ゲーム

コロナウイルスの感染拡大を防止するため、「外出自粛要請」が国民的に呼びかけられている。 もちろん、そういう要請への協力にやぶさかではないので、極力外出は控え、近所をウォーキングするぐらいにとどめていたが、専門家の意見では、そのウォーキングも…

ゲゲゲの水木しげるさん

もう30年ぐらい前の話になるのだろうか。 昔、まだ乗用車メーカーのPR誌を編集していた頃、漫画家の故・水木しげるさんに取材したことがあった。 当時、水木さんは、『ゲゲゲの鬼太郎』のテレビアニメ化も評判となり、売れっ子漫画家としての道をひたすら走…

冷たいバラード

「櫛(くし)を拾うと、つき合っている人と別れることになると、昔の人はよく言ったわ」 そう言って、女は喫茶店のシートに置き忘れられた誰かの櫛を、そっと自分のバッグにしまい込んだ。 半月形の古風な木の櫛だった。 アメ色に染まって、べっ甲のようにも…

七歳までは神の内

一番最初にお化けを見たのは、3歳ぐらいのときだった。 いま住んでいる町に越してくる前。 古びた町の古い一軒屋の中で、両親と伯母と4人で暮らしていた頃だ。 一軒屋といっても、今の感覚でいえばスラム街のバラック。 柱はみな黒塗りながらハゲだらけ。…

平成最後に「場末」を眺める

「場末」って、好きだ。 BASUE …… 今、この言葉はどれほどまで機能しているんだろうか。 ひょっとして、もう「死語」なのかな。 若い人は、もうこういう言葉を知らないんじゃないか? 「街の中でも、目抜き通りから少し外れた、さびれた場所」 … っていうよ…

占い師の裏話 

自分は占いを信じるタイプか? そう自分自身に問うてみると、若いときは、けっこう占いの結果にこだわる人間だった。 受験の失敗、失恋 … 。 先行きに暗雲が立ち込めてくるようなときは、雑誌の片隅に掲載された星占いの結果ですら、ものすごく重要なメッセ…

春という季節は亡くなった人を妙に思い出す

エッセイ 伯父さんの話 伯父がいた。 その妹である母の話によると、きっぷのいい遊び人だったという。 「きっぷのいい」という言葉は死語かもしれない。 現代風に言うと、「気性のさっぱりした」というような意味になるのだろうか。 母は、その言葉を、半分…

1978年に女の歌が変わった

エッセイ 男から脱出した女たち 昭和歌謡を振り返ってみると、女性シンガーの歌が途中からガラっと変わる時期がある。 1970年代の後半あたりからだ。 女たちが、自分の正直な気持ちを歌い始めたといっていい。 たとえば、杏里の『オリビアを聴きながら』。 …

アフロヘア・ガール

めちゃめちゃに、ブラックミュージックに凝っていた時期があった。 20代のはじめの話だ。 大学は卒業したけれど、職がなくて、アルバイトをやっていた。 イタリアンレストランだったが、ハンバーグもカレーもあるっていう店。 1階と2階に分かれていて、2…

卒業 ―― 高校三年生

今週のお題「卒業」 「卒業」という言葉から受け取るイメージは、世代によってずいぶん異なるように思える。 それをテーマにした歌ともなれば、多くの日本人が思い浮かべるのは、まずユーミンの『卒業写真』であったり、海援隊の『贈る言葉』だったり、森山…

映画の話題で知り合った女性

エッセイ・追憶・映画ウッディ・アレン『マンハッタン』 ウッディ・アレンが監督を務め、かつ主演を張った『マンハッタン』が公開されたのは、1979年だった。 公開前から、このクィーンズボロー・ブリッジのベンチの写真が色々な媒体で紹介されていて、それ…

OLDMAN

OLD MAN オールドマン 午後のスタンドカフェで、ぽつねんと、外の景色を見ている老人がいた。 喫煙席だった。 人がまばらに座った客席から、いく筋かの紫煙がのぼっていた。 老人はタバコを吸わないようだ。 喫煙席には、間違えて入ってきたのかもしれない。…

さびしくも美しいラクダのパラダイス

幻の遊園地「白子ラクダの国」 テーマパークというと、誰でも真っ先に浦安の「東京ディズニーランド」や、大阪の「ユニバーサルスタジオ」などを思い浮かべるはずだ。 その二つは、それぞれ人気もあり、集客力もすごい。 ドキドキ、ワクワク、ルンルン。 華…