アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

エッセイ

「余韻」の正体

俳句や短歌、そして短いポエムといった文芸形式は、みな短い言葉のなかに、最大級の「美」と「真実」を残すため、言葉の壮絶な “ダイエット” が行われている。 面白いのは、削られた言葉の方に、「美」や「真実」が残ることだ。 私たちは、通常それを「余韻…

阪神タイガースの奇跡

現在73歳。 東京生まれで、東京育ち。 それでも50年間、“大阪の阪神” ファンをやっている。 江夏、田淵という選手が輝きを放っている時代の阪神に魅せられたのだ。 東京という土地柄もあって、周りの友達はみな巨人ファンだった。 しかし私は、完璧なチーム…

将棋というゲームの恐ろしさ

2023年10月11日、将棋の藤井聡太名人が「王座戦」で、永瀬拓哉九段を下し、ついに8冠を達成した。 そのニュースが脚光を浴びたせいで、それ以降、テレビなどではその対局の棋譜(きふ)を紹介しながらプロの棋士(きし)が解説するシーンが増えた。 それら…

サッカー解説にも新しい波

日本中が熱気に包まれたサッカーのワールドカップが終わってしまった。 今回も、結局日本チームは「ベスト8」の壁を打ち破ることができず、テレビを通じて観戦していた自分としては悔しい思いをしたが、しかし今回の「ベスト16」進出は、今までとは違ったも…

なぜ小説家になるのは難しいのか

僕の周りには、「小説を書いている」と、こっそり打ち明ける人が、昔からたくさんいた。 別に、僕が “文芸サークル” のようなものに所属していたということではない。 キャンパスの芝生広場で偶然話し合うようになった他の学部の人間とか、飲み屋でたまたま…

砂糖の切ないほどの哀しさ

糖尿病を多少意識して、もう7~8年ほど、コーヒーや紅茶に砂糖を入れないで飲んでいる。 といっても、甘いものが大好きなので、ブラックで飲んでいるわけではない。 砂糖の代表品に頼っているわけだ。 「低カロリー甘味料」 というやつ。 「1.8グラムで、…

名言とは何か?

巷でよく「名言」とされる言葉を拾ってみると、その多くは、「人生の成功者」になるための “修行を説く” ようなものが多い。 たとえば、 「自分と同レベルだと思っていた隣人が成功すると、人間というものは屈辱を感じるものだ。しかし、その隣人の幸せに素…

解りやすく書くことの落とし穴

一応、文章を書いたりする仕事に就いているので、「解りやすく書く」ということを最も優先的に考えている。 しかし、最近「解りやすい文章」というものに対して、どうしてもスッキリとうなづけない自分がいる。 つまり、「解りやすい文章」というものには、…

片岡義男が創ったアメリカと音楽の世界

アメリカの明るさ、爽やかさ、さびしさ エッセイストの温水ゆかりさんは、かつて、団塊世代の男性の “アメリカ好き” を揶揄(やゆ)して、こう言った。 「(私の知り合いの団塊世代は)週末になると福生の米軍ハウスに住む友人宅に集まってバンドの練習をし…

日本の政治家たちの「言葉」はどんどん貧しくなっていく

なぜか五輪関連の疑問や批判がつきない 東京オリンピック2020が閉会しても、ネットなどでは、いまだにこのイベントに対する話題が途切れることがない。 もちろん、この後にパラリンピックを控えているわけだから、人々の心にはずっと五輪の熱気が残っている…

塔の形而上学

▲ ピーター・ブリューゲルの『バベルの塔』 人間は、塔が好きだ。 古くは、旧約聖書の「バベルの塔」(← 本当にあったかは不明)に始まり、エッフェル塔やら、東京タワーやら、東京スカイツリーやら、ドバイのプルジェ・ハリファやら …… 。 何のためか、よく…

アメリカ人は口で笑い、日本人は目で笑う

NHKのBSプレミアムで、面白い企画が放映されていた。 昨年の暮れだったか、今年の初頭だったか。 見た日付は忘れたが、興味深い内容だった。 どんな話か? 人間の目には、他の動物とは違った不思議な “機能” が隠されているというのだ。 つまり、ヒトは、現…

「色覚異常」は病気じゃない

昔、… 私が小学生だった頃(もう50年以上も前の話だ)、学校の健康診断に「色盲(しきもう)検査」という項目があった。 「色の識別が正しくできているかどうか」ということを検査するもので、“正常” とみなされない時には、「色盲」という(差別的な)診断…

民主主義時代の終焉?

政治や社会における昨今のメディアの報道を見ていると、第二次大戦後、欧米を中心に尊重されてきた「民主主義」という政治理念が、ついに制度疲労を起こしてきたのではないか? と指摘する論調があまりにも増えてきたような気がする。 その一つの例が、昨年…

ネコの正体

最近のテレビを見ていると、ネコが出てくるCMや、ネコのドキュメント映像がやたら目につく。 人間はいったいネコのどこに惹かれるようになったのか? まず、顔がかわいい。 … と思う人が多いようだ。 これにはちゃんと理由がある。 2020年の12月25日に、NHK…

しみじみと夜が来る

いよいよ、今年もあと2日を残すばかり。 やっぱり、この時期は、なんとなく酒が恋しくなる。 コロナ禍のことでもあるので、家の中で、家族とか、本当に気の合った人間と過ぎ行く一年を振り返りつつ、お互いに照れながら、「俺たち老けたなぁ … 」とか笑って…

クリスマスと紅白の季節

新型コロナウイルスが蔓延しているせいで、年末行事を自宅で迎える人が増えそうだという。 仕事の都合で、今までは年末も家に帰れなかった人にとっては、いいチャンスなのかもしれない。 私個人の思い出を語ると、昔から、この季節には楽しいイベントを経験…

a moment of movement (うつろひ)

秋から冬に変わるこの季節。 1年の中で、景色がいちばん贅沢になる。 公園を散歩していて、そう思った。 木々の葉が、絵具を盛ったパレットのように、にぎやかになる。 朱色に輝く紅葉。 黄色に燃えるイチョウ。 そして地面は、その落ち葉のジュウタンで彩…

「銃」という武器の悪魔的な力 

アメリカ大統領選が近づいてきて、トランプ支持者のなかに、銃で武装して、反トランプ支持者たちを威嚇する(プラウドボーイズなどの)民兵組織が増えてきたことが話題になっている。 ▼ 「ミリシア」といわれる民間の武装グループ こういう光景は、日本では…

「半沢直樹の時代」が意味するもの

TBSのドラマ『半沢直樹』は、今や社会現象化している。 その平均視聴率は25%。 この日曜日に放映された第8話は25.6%を記録した。 特に、ドラマ展開のカギを握る大和田常務(香川照之 54歳)のアドリブ。 「お・し・ま・い・DEATH!」 「死んでもやだね」 …

コロナ禍で「美女」の基準が変わる

新型コロナの感染拡大がいっこうに収束する気配を見せない。 流行の兆しを見せ始めた春先には、「夏になれば勢いが弱まるだろう」という楽観論が趨勢を占めていたが、夏本番を迎えた今、「第二波」が到来したことを疑う人はいない。 医療専門家のなかには、…

人の嗜好は生まれる3ヶ月前に決まる

PCが相変わらず不調で、なかなかブログを更新する条件が整わなかった。 具体的な症例としては、まず起動するのに、そうとうな時間がかかるようになった。 下手すると、初期画面が現れるまでに、20分以上かかることもあった。 次に、アプリの作動が安定しない…

岸辺のアルバム

1974年、台風16号により多摩川の堤防が決壊し、周辺住宅の19棟が水没したという事故(多摩川水害)が起こった。 その事故を題材に企画されたテレビドラマが、『岸辺のアルバム』だった。 2020年6月30日の「アナザーストーリーズ」(NHK BSプレミアム)で、こ…

自己啓発ビジネスを信じていない

30年ぐらい前だろうか。 会社勤めをしていた頃に、一度ヘッドハンティングされかかったことがあった。 マーケティングの会社だったか、コンサルティング会社だったか。 要は、ビジネスのアイデアを出して食べていく会社だった。 仲介したのは、学生時代につ…

樹と水の文化が日本人を育てた

今年は、コロナ禍の影響もあって、ほとんど旅することはなかったが、例年なら、GWから雨期に入るまでの季節はよく車で旅していた。 北関東から東北にかけて旅するとき、時間があるときは、高速道路を降りる。 特にGWの頃になって、車窓を流れる濃い緑の木々…

自分を売り込んでも、自分の値段は自分で決められない

自己啓発本のほとんどは、「自分を売る」ことのノウハウを教えるものといってもかまわない。 いかにしたら、自分の能力や個性を相手に認めさせるか。 そのためには、「謙虚になること」、「相手に優しくなること」、「相手の立場を想像すること」などと諭さ…

カンブリア紀に栄えた恐怖の大魔王

最大・最強生物アノマロカリス 落ち込んでいるときは、古生物の話なんかにうつつを抜かしていると、癒される。 昔、「肺血栓症」の様態が安定するまで、病院の入退院を繰り返したり、家に閉じこもって安静を保った時期があった。 今のコロナ禍における「ステ…

なぜいまだに“昭和的なるもの”が話題になるのか?

平成が終わろうとしていたころ、「今の若者が昭和歌謡に夢中 … 」みたいな情報がマスコミに流れていたことがあった。 そのころ、ふと思ったことがあった。 そういう若者たちが、「昭和」という言葉からイメージしているものって、いったい何なのだろう? 「…

資本主義は「煩悩」を全面開花させる

書評水野和夫 著 『資本主義がわかる本棚』 いま我々が暮らしている社会は、「資本主義社会」と呼ばれる社会である。 それがどんな社会かというと、「煩悩(ぼんのう)」をかぎりなく肯定していく社会といっていい。 「煩悩」とは仏教用語で、「人の苦の原因…

「コロナ後」に世界の風景は変わっているか?

世界中で、コロナ対策のロックダウンが徐々に解除されてくると、各メディアから、「アフターコロナ(コロナ後)」という言葉が出回り始めた。 人々の心に、「コロナ騒動」が終息したあとの世界を問う意識が生まれてきたからだ。 日本においても、「緊急解除…