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コロナ禍で「美女」の基準が変わる

 新型コロナの感染拡大がいっこうに収束する気配を見せない。

 

 流行の兆しを見せ始めた春先には、「夏になれば勢いが弱まるだろう」という楽観論が趨勢を占めていたが、夏本番を迎えた今、「第二波」が到来したことを疑う人はいない。

 

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 医療専門家のなかには、「この状態は、少なくとも今後2年は続くだろう」という人も出始めている。

 

 現在、コロナ禍の収束を期待する人々の口にのぼるのは、「ワクチンが開発されるまでの辛抱」だというが、専門家によると、そのワクチンが、臨床試験などを受けて認可されるまでに、「2年かかる」というのだ。

 

 なかには、「決定的なワクチンはできないのではないか?」という悲観論を唱える人もいる。

 

 けっきょく、人類がこれまでに成功した唯一のワクチンは、「天然痘」だけだったとか。

 

 それ以外のウイルスとは、「事態の鎮静化」を祈りながら “共存” してきただけであり、この新型コロナウイルスも、おそらくそういう “折り合い” の付け方に収まるだろうという。 

 

 そうなると、このコロナ禍と最低でも2年付き合っていくうちに、いろいろなものが変っていくだろう。

 

 変化は、経済や文化にとどまらない。
 われわれのライフスタイルも著しく変化していくはずだし、それにともなって、感受性や美意識まで変わる。

 

 たぶん、男女がお互いに好意を感じる顔の “好み” なども変わっていく。

 

 マスク着用が当たり前のようになっていくだろうから、「イケメン」とか「美女」という基準も、鼻と口をマスクで覆った “目” や髪形などで判断される時代がやってくる。

 

 

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 この前、BS-TBSの「にっぽん!歴史鑑定」という番組を見ていたら、平安時代の貴族たちの恋愛模様を特集していた。

 

 恋愛を語る場合、どの時代においても「美男美女」の基準というものが設けられているが、平安時代の「美男美女」の基準は、現代とだいぶ異なるらしい。

 

 平安時代の美女といえば、よく、「引き目、かぎ鼻、下ぶくれ」などといった造形的特徴を持っていたといわれるが、そういうこと以上に、「髪が長くて艶やかである」とか、「手が細くて長い」というような、顔の造形とはまったく異なる身体的特徴が、美女の基準であったそうだ。

  

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 たぶん、平安貴族の男女は、昼間に顔を合わせることがなく、恋を語らうのは夜だけ。
 となると、顔の造作などよりも、ロウソクの灯りなどで識別できる “髪の長さ” といったようなものがエロスの対象となったのだろう。

 

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 マスク社会が到来したわれわれの時代においても、マスクの鼻を覆う比率とか、眼とマスクのバランスなどといった基準が、新しい “美男美女の基準” になっていくはずだ。

 

 また、「ソーシャルディスタンス」の思想が定着していくなかで、男女の接触も、肉体的に距離を縮めるよりも、距離を保ったまま、精神的交流を活発にさせる方向にシフトしていくはずである。

 

 つまり、ハグしたり、手をつないだり、肩を組んだりするようなスキンシップよりも、会話の刺激が優先される。

 

 平安貴族の男女の交流は、和歌を詠み合うことから始まった。
 すなわち、まず男が “気の利いた歌” をつくり、女性の住む館の下女などに渡して様子を見る。

 

 すると、その歌のセンスに関心を覚えた女が、今度は男に情緒たっぷりの歌を返す。

 

 だから、平安時代の男女は、歌のやりとりで気心が知れあうまで、お互いがじっくり見つめ合って顔の造作を確かめるようなチャンスを持たなかった。

 

 それでも恋愛は成立した。
 「イケメン・美女」などといった顔の造形による好みよりも、和歌をつくるときのセンスが恋愛感情の決め手となったからである。

 

 コロナ禍時代の恋愛も、やがてそれに近くなっていく。
 お互いにマスク越しに見つめ合うことが当たり前になるので、インスタやツィッターをまとめるセンスの良さが、顔の好みより優先するようになる。

 

 ある意味で、知性的かつ情緒的な恋愛文化が生まれて来る。

 

 今はそんなふうに実感できないかもしれないが、男女の好みなど、時代の文化によって、あっという間に変っていくものだ。