いよいよ、今年もあと2日を残すばかり。
やっぱり、この時期は、なんとなく酒が恋しくなる。
コロナ禍のことでもあるので、家の中で、家族とか、本当に気の合った人間と過ぎ行く一年を振り返りつつ、お互いに照れながら、「俺たち老けたなぁ … 」とか笑って、しみじみと酒を酌み交わすなんていうのが似合いそうな季節だ。
そんな気分を、もし「音」で表わすとしたら?
自分は、下のような曲が真っ先に浮かぶ。
昔、サントリーオールドのCMで使われた曲。
いちおう『夜が来る』というタイトルが付いているけれど、『人間みな兄弟』という別タイトルも付いているようだ。
タイトルがふたつもあるということは、おそらくCMにこの曲を使おうとしたスタッフたちの間では、タイトルなどどうでもよかったからだろう。
ところが、予想外にこの曲は評判になり、誰が作曲したのか? 歌っているのは誰か? そもそも、いつ作られたのか? などということが話題になり始めた。
最初にテレビで流れたのは、1967年だという。
作曲は、CMソングやテレビ主題歌などを数多く手掛けている小林亜星。
とにかくこの曲は、ウィスキーが飲みたくなるようなBGMとしてサントリーオールドのイメージ形成に大きく寄与したものだから、その後1995年にも復活し、2008年にもまた復活している。
それらの新しいバージョンでは、長塚京三、田中裕子、國村隼などの役者を揃えた短いドラマが添えられ、そのドラマの展開を想像させるような、いくつかのバリエーションが作られた。
それだけ、この『夜が来る』という曲の力が大きかったのだ。
しみじみ
ほのぼの
ほっこり
… そんな言葉が合いそうな、そこはかとない切なさと、人の心を潤す温かさが溢れていて、まぁ、ほんとに、冬の長い夜を友と酒を酌み交わしたくなるようなCMである。
誠にサントリーという会社は、CMづくりがうまい。
それも音楽との絡め方が秀逸。
ジャズベーシストの大御所であるロン・カーターを使ったサントリー・ホワイトのCMなんか、もう観ている人間から言葉を奪い、ただ唸らせるだけという境地に誘い込む。
このCMが万人の心に届いたかどうかは別としても、少なくともジャズが好きな人間に対しては、「ジャズに合う酒はやっぱりウィスキー」という刷り込みを行ったはずだ。
サントリーは、ビールのCMでも味のある芸を披露する。
やはり、曲との絡みがうまい。
それが、松田聖子の歌っていた『スイート・メモリー』。
画面で歌っているのはアニメのペンギン。
小さなクラブで、ペンギンの女性歌手がこの歌を唄い、それを聞いていた客のペンギンの一人が、「いい歌だなぁ … 」とため息をつきながら、涙を流すというシーンまで盛り込まれる。
ビールのCMなのに、夏の解放感などとは無縁で、むしろしっとりした冬のバーカウンターで聞くのが似合いそうなつくりになっている。
この曲は、途中から英語のパートに変わるのだが、CMではその英語パートだけが使われていたように記憶している。
もちろん、このCMソングが流れ出した当初は、「歌・松田聖子」などというテロップもなかったのではなかろうか。
だから、私などは、どこかの外国の曲を持ってきたかと思ったくらいだった。
結果的には、それがCMとして成功し、後に歌い手が松田聖子だと世に知れてからは、今度は松田聖子の株も上げた。
こうしてみると、酒には音楽が欠かせないということを感じる。
いい音楽は、人を酔わす。
酒との相乗効果が上がるわけだ。
今年は、奮発して、サントリーの「響き」(7.700円のやつ)を買った。
大晦日の夜から家で飲むつもり。