アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

奥行きを失った絵が獲得したリアル感

絵画批評日本の屏風絵の魔術 長谷川等伯や尾形光琳らの “屏風絵” について、何かひと言書きたいと思っていたのだが、鑑賞眼もないし、予備知識もないので、何も書けないままでいた。 でも、圧倒されるのだ。 いったい、こういう空間造形は、どういう精神から…

自分にとって最高のドライブ音楽

オールマン・ブラザーズ・バンド(写真下)の音を最初に聞いたのは、ラジオのFM放送だったが、あるいはFENだったか。 放送局も番組名も忘れてしまったが、曲名だけははっきりしている。 『ジェシカ』だ。 1973年に発表された『ブラザーズ&シスターズ』のな…

ハマスホイ 『陽光習作』

絵画批評ハンマースホイの「扉」 この1月21日(2020年)から3月26日まで、東京都美術館(台東区上野)で『ハマスホイとデンマーク絵画』展が開かれている。 ヴィルヘルム・ハマスホイ 昔は、「ハンマースホイ」といった。 最近日本語で表記するときには、「…

『麒麟がくる』の脚本と役者の演技に期待

NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』の2回目を見たが、初回に続き、安定感のあるつくりになっていた。 1年続く長丁場のドラマとしては、まずまず無難な滑り出しを見せてくれたのではないか。 で、この2回目。 戦闘シーンが多少長いようにも感じられた。 ただ、…

楽園のファンタジーとメランコリー

絵画批評マックスフィールド・パリッシュの絵 マックスフィールド・パリッシュという画家の絵が好きになったのは、1枚のアルバムジャケットがきっかけだった。 昔(20代半ば)、アメリカのサザン・ロックのアルバムを集めていた時期があって、『THE SOUTH'S…

刺青という劇的表現

名古屋のキャンピングカーショーを取材に行くとき、必ず泊まっていたのが、三重県桑名市にあった「オートレストラン長島」(写真下)だった。 残念なことに、2017年に閉館になってしまったが、名古屋のショーが終わった夜は、自分のキャンピングカーでここに…

ランボーやカフカよりも餃子のラー油

短歌を作るようになって、ちょうど1年ほど経つ。 知人に誘われて、地元の「短歌の会」に顔を出したのが、昨年の1月18日。 月1回の会に2首ほど用意して提出してきたが、わずか1年ほどの修行では成果が上がるわけもなく、勉強会を主宰する藤井徳子先生か…

亭主を笑い飛ばす女房たち

うちのカミさんが、近所のオバ様方と “お茶” してきたらしい。 嫌な話を聞いた。 今、カミさんの周りに集まるオバ様方の “お茶” で、いちばん盛り上がる話題は、亭主の自慢話らしいのだ。 「自慢話」という言葉に、無邪気に喜んではいけない。 「どれだけダ…

『国盗り物語』 斎藤道三の最期

何度も読み返す本というのがある。 特に小説など、ある感銘を受けた情景が浮かんでくると、 「また、あそこが読みたいな」 という気分になり、その部分だけを拾い読みすることがある。 司馬遼太郎の書いた『国盗り物語』の題3巻。 斎藤道三(さいとう・どう…

『麒麟がくる』初回はまぁまぁかな

それにしても、今回のNHKの大河『麒麟がくる』の番宣はすさまじかったなぁ。 いろいろな歴史企画で “明智光秀特集” を組むし、主役の長谷川博己をトーク番組に出演させて、役作りの抱負を語らせたりするし。 「絶対に外せない !」 というNHKの意気込みがひ…

中国はなぜ「自由」や「人権」を嫌うのか

習近平主席の訪日の意味 この春、訪日が予定されている中国の習近平(シー・チンピン)国家主席を “国賓扱い” にするかどうかで、いま政権与党内でも議論が起こっている。 「国賓」ともなれば、天皇が主催する国家行事となり、いわばわが国がもろ手を挙げて…

フェルメール『デルフトの眺望』

絵画批評世界の裏側まで見通す「明晰な視界」 フェルメールの絵のなかでも、『真珠の耳飾りの少女』の次に人気があるといわれている『デルフトの眺望』。 しとやかな優しい光。 建物も運河の水面も、細部までくっきりと描かれることによって伝わってくる明晰…

印象に残る人、印象に残った言葉

もう5年ぐらい前の話だ。 NHKで、終戦からバブル崩壊までの70年の歴史を追った特番が企画されたことがあった。 タイトルは忘れたが、“戦後70年を振り返る” という言葉が入っていたような気がする。 そのとき、NHKが保存していた1945年から1990年までの実写…

「はてなブログ」を始めて1年

「はてな」というブログサービスを利用させてもらうようになって、ほぼ1年経った。 それまでは、「自動車」や「鉄道」に興味のある方が集まる「ホビダス趣味ログ」というブログで、14年間、キャンピングカーや映画、文芸ネタを中心に記事を書いてきた。 し…

短歌とは狂気を飼いならす作業である

短歌作家 穂村弘の『ぼくの短歌ノート』を、この前ようやく読了した。 この本については、一度このブログで触れた(↓)。 https://campingcarboy.hatenablog.com/entry/2019/01/29/072856 そもそも、読み始めたのは、ちょうど1年前だ。 つまり、1冊の本を…

あっさり醤油味のラーメンが好き

テレビで安定した視聴率を稼げるのは、スズメバチ駆除の話と、人気ラーメン店の紹介だという話を聞いたことがある。 つまり、画面にハチかラーメンが映っていれば、「どの番組が面白そうかな … 」と、コントローラーをちゃかちゃか動かしていた人の手が止ま…

ネズミの社交性

一人っ子なのである。 だから、基本的に一人遊びが得意。 居酒屋の片隅で、一人で黙々と酒など飲んでいるのが、全然苦痛じゃない。 数学者の森毅さんが面白いことを言っていた。 「一人っ子は協調性があまりないけれど、その足りない分を、社交性で補う」 当…

陽水の歌が漂わす「死の匂い」

テレビなどで、シンガーソングライター井上陽水の特集を見る機会が増えた。 昨年(2019年)11月27日には、作家の高橋源一郎、朝吹真理子、音楽家の小室等らが陽水の世界観を “文学” のように語り合う『深読み音楽会』(NHKのBSプレミアム)という番組が放映…

格差社会のトップに立つセレブたちの資産 

現在、日本のマスコミをにぎわせているニュースのひとつに、元・日産自動車CEOカルロス・ゴーン氏の国外逃亡がある。 逃亡先はレバノン。 ゴーン氏の祖父や父の故郷であり、かつ現在の(2人目の)夫人であるキャロル・ナハス女史の出身地でもある。 密出国…

トランプ大統領の精神分析

「令和」という時代の最初の正月を迎えたばかりだというのに、波乱の時代の幕開けを予感させる事件が立て続けに起こっている。 その一つが、米国トランプ大統領の指示によるイランのソレイマニ司令官の暗殺。 トランプ氏は、これを、 「アメリカとイランが戦…

ターナー、光に愛を求めて

映画批評大英帝国の誕生を絵画で表現した男 2014年イギリス・ドイツ・フランス合作映画原題「Mr. Turner」 日本公開 2015年6月 知的興奮を誘う傑作 美しい映画である。 主人公は、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー。 “人物事典” ふうにいうと、「18…

生タヌキと遭遇

これは昨年(2019年)の話である。 11月の末。 小雨の降る夜に雨ガッパをはおり、自転車を漕いで、家から500mほど離れたコンビニまで飲み物を買いに出たことがある。 時間は夜の0時を回り、深夜の1時ぐらいになっていたと思う。 住宅街を真っ直ぐ抜ける道…

人類はなぜネズミを可愛いと思うのか?

今年(2020年)の干支は「子(ネズミ)」である。 ネズミがなぜ干支の動物に選ばれているかは諸説あるらしいが、一つは、「子供をどんどん産んで数を増やす」という特性から、「子孫繁栄」の象徴とされるらしいからだ。 しかし、歴史的にみると、ネズミが個…

謹賀新年 2020