アートと文藝のCafe

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生タヌキと遭遇

 
 これは昨年(2019年)の話である。

 

 11月の末。
 小雨の降る夜に雨ガッパをはおり、自転車を漕いで、家から500mほど離れたコンビニまで飲み物を買いに出たことがある。


 時間は夜の0時を回り、深夜の1時ぐらいになっていたと思う。

 

 住宅街を真っ直ぐ抜ける道の奥に、小動物のシルエットが見えた。
 ネコの姿とは微妙に違う。

 

 近づくと、タヌキだった。
 2mほどの距離で、見つめ合うことになった。
 目の周りが黒いので、まぎれもなくタヌキだ。

 

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 わが町に60年以上住んで、野生のタヌキに遭遇したのははじめてのことだった。
 
 この時期、野生のイノシシやら、クマやら、サルたちが冬場のエサを求めて住宅街に出没するというニュースが相次いでいた。

 

 だから、民家がぎっしり建て込んでいる住宅街のど真ん中に、見慣れぬ動物がうごめいていてもおかしくはない状況であったが、それにしても、タヌキの出現には意表を突かれた。

 

 そいつはしばらく道路のはしをチョロチョロ歩いていたが、やがて「キャウン」と一声ほえてから、もと来た道を戻っていった。

 

 暗くて見えなかったが、その先に、もう一匹いたような気もする。

 2匹は、こそこそと仲良く闇の中に消えた。

  

 でも、いったいどこから出てきたのだろう?

 周囲には林もなければ、森もない。

 
 ここから1kmほどの距離に、巨大な池を有した広い公園があるが、仮にそこから来たにせよ、この住宅街まで来るには、2車線の広い道路を横断しなければならない。

 

 タヌキは臆病な動物で、自動車のヘッドライトを浴びただけで、気絶してしまう(これをタヌキ寝入りという)くらいだから、深夜になっても車の往来が激しいその道を渡ってくるとは考えにくい。

 

 となると、どこかの古い屋敷の軒下などに潜り込み、昼はひっそりと寝て暮らしているのだろうか?

 

 エサはどうしているのか?
 冬は寒くはないか?
 夏は暑くないか?
 散歩中の犬に追われることはないのか?
 野良ネコから、ネコパンチを受けたりすることはないのか?
 子供の教育はどうしているのか?
 
 人ごと というかタヌキごとながら、いろいろと心配してしまう。

 

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 ネット情報によると、現在、東京都内にはタヌキが1,000匹ぐらいいるという。
 いずれも、林の中や、古民家の床下や、空の排水溝の奥などで暮らしているらしい。
 ミミズのような虫から木の実まで。
 肉食のキツネと違い、タヌキは雑食だから、都市生活を苦手としていない。
 彼らは知る人ぞ知るアーバンアニマルなのだ。
   
  
 翌日、近所の井の頭動物園までタヌキを見に行った。
 コンクリートで固められた獣舎のなかに、確かにいた。

 だが、寝ていた。
 夜行性なので、昼間は体を丸くしてずっと寝ているという。

 

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 タヌキの名前は「ポン」というらしい。
 たぶん男性。
 2009年に杉並区で保護された個体だとか。

 

 仲間に「リン」という女性がいたらしいが、2019年の4月から療養生活に入り、11月22日に死亡したという。

 

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 1人残された「ポン」。
 なんだか可哀想だ。

 

 そういえば、私がタヌキを住宅街で見たのも11月の終わり。
 あれは、その頃亡くなった「リン」の霊だったのだろうか。
 私がブログネームを「たぬき」としているばっかりに、
 「どんなヤツなのだろう?」
 と顔を見にきたのかもしれない。

 

 真夜中に 住宅街に出るタヌキ 夫婦か親子か体を寄せて