NHKの新・大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、まぁまぁのスタートを切ったようである。
ネットニュースなどを見ていると、初回の視聴率も17.3%と上々。
視聴者の声も好意的な意見が多数を占めていた。
実際、見ていた私も、「面白い」と思った。
さすが三谷幸喜(左下)。
脚本の進め方がうまい。
まず、テンポが小気味よい。
「話をスピーディーに回している」というだけでなく、話の途中であっても、必要ないと思われる個所は大胆にカットしている。
まさに、脚本と演出の勝利。
視聴者の想像力にしっかり訴える伏線の張り方がうまいのだ。
役者たちも、その呼吸をうまく把握しているという印象を受けた。
特に「うまいなぁ」 … と感心したのは、出演者たちの名前や役どころがよく分からないうちに、彼らの演技や表情で、ストーリーが即座に把握できるようにしていたこと。
▼ 主演の小栗旬
大河ドラマで取り上げられる時代が「戦国」と「幕末」に集中していたのは、けっきょく登場人物たちの名前や出自が視聴者に認知されやすいからである。
それに比べると、鎌倉時代などの武将の名前などはほとんどの人が知らない。
源頼朝、義経、平清盛ぐらいなら誰もが知っているかもしれないが、北条氏の武将を2人以上挙げられる人など、受験生でもわずかだろう。
「北条義時?」
誰、それ?
… である。
しかし、今回は、登場人物たちのキャラクターを誇張して、演技にメリハリをつけたことで、名前など分からなくても、話の筋が通るようにしたのはお手柄だった。
それに一役買ったのが、セリフ回しを現代劇に徹したこと。
これに関しては賛否両論あるかもしれない。
私のような、NHK大河を第一回(1963年)からずっと見ているような老人からすると、こういう現代劇のセリフ運びには興醒めすることが多い。
しかし、今回はそれがうまくいっている。
役者たちの
「そっちかよ!」
「またこれだ!」
などという言い回しが、けっこう痛快に聞こえた。
結局、人間の耳というのは、日頃聞きなれた言葉の方を心地よく感じてしまうのだろう。
あとは、源頼朝という人物像をどこまで深く掘り下げるかだろうな。
初回の頼朝は、軽妙な立ち居振る舞いと、冷酷で不気味な一面を瞬時に見せるという離れ業をやってのけた。
大泉洋(上)も、役者としての幅が出てきたのだろう。
頼朝が死んだあと、視聴者の間に、「頼朝ロス」というものが生まれるかもしれない。