アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ベックリン 「死の島」の真実

絵画批評 誰でも、一度は見たことのある絵かもしれない。 アルノルト・ベックリンの描いた『死の島』。 不吉なタイトルだが、ベックリン自身が名付けた名前ではない。 彼がフィレンツェにいた頃、若くして夫を亡くしたある婦人から、 「夫を偲ぶときに夢想す…

AI が地球に君臨するポスト・シンギュラリティの世界

エッセイ・AI 論 「シンギュラリティ」という言葉をよく聞くようになった。 「技術的特異点」と訳す。 原語そのものがむずかしいだけでなく、訳語もむずかしい。 知的レベルが高いことを自慢したがるインテリ好みの言葉に聞こえるが、たぶんこの言葉は、その…

ピエール・ボナール『黄昏』

絵画批評 昨年(2018年)の秋から冬にかけて、国立新美術館でフランスの画家ピエール・ボナールの展覧会が開催された。 同じ時期に、ムンク展、フェルメール展、ルーベンス展なども開かれ、マスメディアにも紹介されて話題を呼んだ。 それらの巨匠たちと比べ…

三島由紀夫 ふたつの謎

文芸批評 大澤真幸(おおさわ・まさち)氏の『三島由紀夫 ふたつの謎』(2018年11月初版)を読んだ。 「謎」というタイトルが付けられているように、これは “謎解き” の本である。 三島由紀夫は、なぜ自衛隊駐屯地に押し入り、その場で「切腹」するという時…

山の郵便配達

映画批評 1999年に制作された中国映画だ。 日本で上映されたのは、2000年代に入ってからか。 公開中にカミさんが岩波ホールまで観に行ったという。 「信じられないくらい美しい光景が展開する映画だった」 というのが、観てきた後に、カミさんの口をついて出…

種村弘『ぼくの短歌ノート』についてのノート

文芸批評 穂村弘さん(写真下)の書いた『ぼくの短歌ノート』(講談社)という本が読み終わらない。 購入してから、もう半年以上経っている。 デイパックのなかに詰め込んで、外に出るときは必ず持ち歩ているというのに、なかなか読了できないのだ。 それは…

小説『暗黒街の掟』

創作(ヨタ話) 「やつは頭もいいし、度胸もある。しかも、キャバレーのステージで歌っている女が、客席の暗がりの中からでも見つけ出すほどの美男子だ。 それに一つのシマを仕切るだけでは満足できない貪欲さってのも持ち合わせている。 ただ、ちょっと調子…

月天心貧しき町を通りけり

絵画・文芸批評 与謝蕪村(よさ・ぶそん)の有名な俳句の一つに、 「月天心(つきてんしん)貧しき町を 通りけり」 という句がある。 「月が、空の真ん中(天心)に輝いている貧しい町を、いま私は通り過ぎようとしている」 という意味だ。 「つきてんしん」…

弦楽器の罪つくりな美しさ

映画・音楽批評 人間の悩ましい情念の高まりを表現するのに、弦楽器ほどふさわしい楽器はない。 「狂おしい」 という言葉を、もし「音」で表すとしたら、ヴァイオリン、チェロといった弦を使った楽器以上のものはないのではないか。 弦をつかった音楽は、時…

『マッドマックス』の終末感

映画批評 冬の陽射しが、葉を落とした木々の間をかすって、弱々しく地面にたどり着くような淋しい日だった。 かれこれ、30年近い昔のことである。 師走も近いという休日。 あてもなく街をさまよい歩いて疲れ、それでも家に帰る気もしないという中途半端な心…

跨線橋を見に行く

エッセイ・日記 跨線橋を見に行った。 コセンキョウ …… 家内にそう言われても、それが何を意味するのか、にわかにイメージが湧かなかった。 「ほら、電車の線路をまたぐ橋 … 」 そう言われて、はじめて呑みこめた。 そういえば、ずっと前から「跨線橋」とい…

ジュリアン・オピーのスーパーフラット画法

絵画批評 ジュリアン・オピーを語る もう、そうとう昔の話になるけれど、会社のパソコンのファイルの底に、「TURBO FREEWAY(TF way)」というゲームソフトが眠っているのを発見したことがある。 自動車レースのゲームだった。 といっても、サーキットではな…

まずはテストです

テスト 別の無料ブログサービスで、11年間ブログを書いてきた。 個性の強い書き手が、それぞれ趣味に特化した記事をアップしていたサイトで、開設当初はそれなりの人気があった。 しかし、やがて大手のブログサービスに押され、そのうちあまり名前を聞くこと…