音楽の好みでいえば、1960年代から70年代初頭のリズム&ブルースがいちばん好きである。
仕事で頭が疲れてくると、まずグラスにペットボトルの紅茶を注ぎ、そこにウィスキーを数滴垂らす。
それをチビチビ舐めながら、パソコンの前に座り、YOU TUBEを頼りに、60~70年代のR&Bを探す “旅” にさまよい出る。
この前、そういう “旅” の途中で、スモーキー・ロビンソン(写真上)の『Ooo Baby Baby』にぶち当たり、久しぶりに聞きほれた。
やっぱりいいんだなぁ、これ!
本当に、スモーキー・ロビンソンは素敵だ。
上は、ミラクルズを率いていた時代(1965年)の貴重な動画。
もちろん、この時代、私はラジオでしか、この曲を聞いたことがなかった。
その曲が収録されたテレビ番組が、こんなふうであったことを知り、もう感無量である。
スモーキー・ロビンソンは、もちろんシンガーとしても大好きな人だけど、ソングライターとしてもっとも敬愛する人の一人だ。
特に、バラードを作らせたら、R&B界でこの人の右に出る人はいない。
70年代に入って、ソウルミュージック界では、フィラデルフィア・サウンドが一世を風靡して、ギャンブル&ハフとかトム・ベルのような人たちが、数々の華麗なバラードを作ってきたけれど、スモーキーの素晴らしさにはかなわなかった。
なんといったって、スモーキーのバラードは、“鼻歌” で歌えるのだ。
つまり、演奏(カラオケとか … )の助けを借りなくなって、気持ちの良い朝に、自転車を漕ぎながら歌えてしまう。
これぞ、“名曲” の原点である。
坂本九の「上を向いて歩こう」だってそうだけど、鼻歌で歌えるからこそ、世界に広まったのだ。
YOU TUBEの面白さは、検索しているうちに、思いもかけないアーチストの見たこともないライブに接したりするところにある。
で、このスモーキーつながりで、次に発見したのが、ホール&オーツのダリル・ホールと共演しているライブ映像。
これは、ほんとうに涙モノだった。
演奏された場所は、あの有名な「Daryl’s House」。
では、この映像のいったい何が「涙」なのか。
それは、ダリル・ホールのソウル・ミュージック(R&B)へのリスペクトがしっかりと感じられるからだ。
彼にとっては、まさにソウル・ミュージック界の神様のようなスモーキーへの熱いリスペクトが、こちらにも伝わってくる。
ダリルは、スモーキーを横に座らせ、そのスモーキーの持ち歌である「ウー・ベイビー・ベイビー」のイントロを、ちょっと恥ずかしげにギターで引き出す。
たぶん、打ち合わせもない選曲なのだろう。
ダリル・ホールが歌いだすと、スモーキーの方も、「ええ? オレの歌やるの?」とばかりに、照れとはにかみを漂わせながら笑う。
バックのミュージシャンも、ニヤニヤしながら、その成り行きを見守る。
で、 “師匠” の前で、あの …、あのですよ! あのダリル・ホールが、ずぶの素人のような初々しさで「ウー・ベイビー・ベイビー」を歌い始め、師匠がバックに回ってサポートする。
この心の通い合う温かいやりとり!
師匠スモーキーを慕うダリル・ホール。
弟子の成長ぶりを温かく見守るような、スモーキーの笑顔。
ソウル好きには、感涙なくして見られない。
ああ、紅茶に垂らしたウィスキーがうまい!
次に紹介する「ベイビー・カム・クローズ」は、70年代にFENで聞いたものだが、その時代、日本版どころか、輸入盤も手に入らなかった。
これを買うために、( … だけでもなかったけれど)、昔、アメリカに行ったことがある。
で、この『Baby Come Close』
ねっとりとした甘みを持つ、極上のワインの味わい。
触れると肌がとろけそうな、シルクの感触。
ストリングスのアレンジがなんともいえずに心地よいんだけど、決してフィリー系のような華麗さを追求するものではなく、繊細さを大事にしている。
この「ベイビー・カム・クローズ」という曲には、自分が思い描ける最高の快楽の姿があった。
自分の「恋愛シーン」を思い浮かべるとき、愛する女性とベッドインする機会があったら、ぜったいBGMはこれだ! と思い込んでいた時期がある。
結局、その思い込みはいまだに果たしていない。
(結婚したあと、カミさんとも、こういう機会は持たなかった)
… ということは、これから来るというのだろうか?
もうじき69歳なんだけど。