テレビを観ながら、カミさんと2人で飯を食っていた。
ふと、箸を持つカミさんの手が止まった。
画面を食い入るように見つめたままだ。
テレビ画面にウーパールーパーが映っていた。
それを眺めていたカミさんの視線が、やにわに、こちらを向いた。
「似てる」
と、真顔で一言。
俺の顔が、ウーパールーパーに似ているらしい。
冗談じゃねぇぜ。
化け物じゃないか?
でも、彼女がいうには、
「造形的特徴を捨象し、フォルムを抽象化していくと、顔の造作が
同型なのだ」
とか。
すなわち、顔が丸っこく、目と目の間が離れ、かつその目が極端に小さい。
以前、水族館に行ったときも、オオサンショウオの水槽の前で立ち止まったカミさんは、しばくらしてから俺の顔に視線を移して、
「似てる」
といい放った。
「何が?」
「オオサンショウオに」
俺の顔というのは、
「洗面器みたいに大きな頭の横に、ゴマ粒みたいな目がちょこっと付いていて、オオサンショウオにそっくり」
というわけだ。
あいつ、何が言いたいんだ?
確かに自分がイケメンだとは思ったことはないが、いくら何でもウーパールーパーとかオオサンショウオはねぇだろう?
「不気味だ」
と言いたいのか?
それとも、
「可愛い」
とでも言うつもりか?
俺の小学生時代のあだ名は、「チーター」だった。
足が速かったからだ。
中学校では、「キツネ」と呼ばれた。
顔が細かったからだ。
今は「ウーパールーパー」だ。
年は取りたくないもんだ。