12月18日のネット情報によると、自民党の高市早苗政調会長が、北京冬季五輪を「外交的ボイコットを岸田政権に呼びかけたが、政権側の茂木幹事長がその意見の採択を見送ったことが報じられていた。
高市氏は、そのことを「くやしい」と恨んだという。
高市氏の背後には、安倍晋三元首相がいる。
だから、高市発言というのは、そのまま “安倍発言” と見なすことができる。
一連の記事の出どころは「zakzak」というサイト(夕刊フジ公式サイト)」だ。
同サイトは次のように主張する。
「安倍元首相は、岸田首相の煮え切らない態度に業を煮やしている。このままなら、安倍氏が、岸田氏を見限る局面もあるのではないか」
さらに続けて、次のようにも書く。
「安倍氏の発信には、緊迫した中国・台湾情勢に対する安倍氏の強い危機感がにじみ出ている。優柔不断な岸田首相とは、大違いである」
結論から先にいうと、上記のような論調は、政治を知らない識者の発言でしかない。
政治というのは、… なかでも「外交」というのは、果敢に攻め込むことも必要だが、時には「のらりくらり」と泳いでいた方がいいこともある。
「zakzak」の書き手たちには、その呼吸が分かっていない。
安倍氏や高市氏の対中国強硬論は、まさに「政治を知らない」がゆえにできることだ。
一般的に、安倍氏、高市氏のグループは「タカ派」、「保守派」などといわれている。
私は、その呼称は違うと思う。
彼らは、ただの「観念派」にすぎない。
つまり、イデオロギーで外交を断ずるという人たちなのだ。
それに肩入れする「zakzak」の論客たちも、「観念派」である。
だから、“煮え切れない” 岸田首相の言動を、
「宏池会に染み込んだ “親中” 体質だ」
などと揶揄する。
バカじゃないのか? この論者たちは。
確かに、岸田首相は宏池会の流れを汲んだ政治家だが、岸田氏がのらりくらりとしているのは、“宏池会のDNA” などという古めかしいものというよりも、現在の中国とのイデオロギー戦に対する深謀遠慮だ。
中国は、北京五輪のボイコットを手中する国が、その理由に「人権擁護」という言葉を出したとたん、意地汚いほどの痛烈な罵倒を繰り出してくる。
場合によっては、経済的な対抗手段すら持ち出してくるだろうし、さらには、嫌がらせとして尖閣への圧力をもっと徹底させてくるだろう。
安倍・高市氏らは、そういう中国に対して、むしろ挑発するように、「人権」を盾に歯向かおうとする。
それは利口なやり方ではない。
中国という国は、政治的に批判しようがしまいが、敵対勢力をつぶそうと思ったときは、一気呵成に攻め込んでくる。
そういう中国に対しては、防衛的な対応もしっかり進めながら、言葉による外交では「のらりくらり」とかわしておくことが賢明なのだ。
中国の人権侵害を糾弾することは非常に大事だ。
しかし、それこそメディアなどの仕事だ。
中国政府は、日本のメディアの動向もしっかりチェックし、自分たちが不利益を被るようなことには苦い思いを抱いている。
ただ、彼らも、メディアの発言に関しては、国を超えて攻撃することはできない。
その点に対し、政治家は、発言において慎重にならなければならない。
つまり、中国が牙をむくタイミングをずらすことが大事だ。
安倍・高市両氏の主張を聞いていると、
「こいつら政治家なのか?」
と疑わしくなる。