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大統領選、いま始まる

 いよいよ本日(日本では11月4日)に迫ったアメリカ大統領選挙
 個人的には、今いちばん関心を持っているニュースである。
  


 もちろんヨソの国の選挙なので、トランプ氏が勝とうが、バイデン氏が勝とうが、日本人の私には関係のない話である。

 

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 にもかかわらず、この選挙には、まるでドラマでも見ているような面白さがある。
 現代社会の明日の姿が、すべてここからスタートしていきそうに思えるのだ。
 
 アメリカの国家元首を決めるだけの選挙なのに、ここには国際政治のゆくえ、地球環境問題のゆくえ、格差社会の動向、宗教のあるべき姿、民主主義存続の問題、知性主義と反知性主義の相剋、極東の安全保障問題  現在懸案事項となっている国際社会の動向がすべてこの選挙にかかっていそうな気がする。

 

 それだけに、日本のメディアも本日まで、この選挙戦の報道にたくさんの時間をとってきた。


 
 そこで提出されたいろいろなレポートを見ていると、トランプ支持者たちの熱狂ぶりも伝わってくる。

 

 彼らの多くは、低所得・低学歴の白人労働者である。
 そのなかでも、選挙の勝敗を握るのは、“ラストベルト” といわれるエリアに住む自動車産業や石油・石炭産業に従事する人々である。

 

 かつては米国の主要産業に従事する人たちだが、経済のグローバリズム化にともない、仕事量の漸減に苦しむようになった人々が多数派を占める。

 

 2016年、トランプ氏は、彼らに、「仕事を取り戻す」ことを公約に掲げて支持を集め、大統領に就任した。
 
 今回の選挙でも、この構図は基本的に変らない。

 

 そのため、今回の選挙でも、4年前にトランプ氏に票を投じた支持者たちは、
 「トランプは俺たちに仕事を返してくれた。今までいなかった素晴らしい大統領だ」
 と手放しで評価し、今回も彼の再選を強く望んできた。

 

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 だが、彼らには残念なことだが、世の中の趨勢は、やがて脱石油・脱石炭の方向に舵を切らなければならないようになっていく。


 地球環境を守るために「脱・炭素社会」を実現するという方針は、次第に各国政府の合意事項となり始めているからだ。

 

 そうなると、脱石油・脱石炭を世界が標榜するかぎり、ガソリン自動車を中心としたアメリカの自動車産業も方針転換を迫られるようになる。

 

 アメリカにおいても、トランプの対立候補である民主党バイデン氏は、地球環境を守るための国際会議「パリ協定」から離脱したトランプ氏の方針を批判し、アメリカは再び「パリ協定」に復帰すると宣言した。

 

 日本でも、菅首相が、
 「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」
 と宣言した。

 

 なんと中国でも、習近平主席が、
 「中国のCO2排出量を2060年までに実質ゼロにする」と表明したのだ。

 

 トランプ氏がしなければならなかったのは、こういう世の中の動きを見極め、20世紀的な産業構造に依拠しなければならなかったアメリカの労働者たちに新しい産業方針を示し、そのための支援に労力を惜しまず、彼らを救ってやることだったのだ。

 

 それにもかかわらず、トランプ氏は彼らの今までの仕事を「いっそう振興させる」と大風呂敷を掲げて支持を取り付けた。
 無責任極まりない態度だと思う。

 

 トランプ氏は自分のことしか考えていないということは、こういうことからも分かる。
 大統領としてトランプ氏が活動できるのはわずか4年でしかないが、彼らはまだ10年~20年は現在の仕事に従事しなければならない。
 そうなれば、状況はさらに彼らに不利になり、多くの人は今よりも深刻な困窮と失望のなかで生きていかざるを得なくなるだろう。
 
 
 こういうトランプ氏の無責任な言動を、それでも評価する日本人の評論家もいる。
 政治ジャーナリストの木村太郎氏などがその筆頭だ。

 

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 彼は今回のアメリカ大統領選について、早いうちから一貫して「トランプが完勝する」といい放ち、これまでの4年間においても、
 「トランプには大統領としての実績がある。彼のおかげで国は豊かになり、経済は成長した」
 と高く評価。

 

 さらに、トランプを批判する知識人とトークするときは、
 「ヨソの国のことなのだから、日本人は放っておけばいいのだ」
 と手厳しく議論の相手を突き放した。

 

 トランプを支持する人間は、みなどこかトランプ氏と共通の肌合いを持っている。
 木村太郎氏からも、トランプに似た傲慢さやふてぶてしさが匂ってくる。
 
 また、トランプに期待する日本人評論家のなかには、
 「中国の膨張政策に歯止めを掛けられるのはトランプしかいない」
 と言明する人もいる。

 

 「民主党はこれまでも中国に甘かったから、バイデンでは海洋進出を早める中国に何も手出しはできない」
 という論理だ。

 

 だが、トランプ氏が中国に強硬姿勢を取り続けているのは、ディール(取り引き)でしかない。


 彼は、中国がアメリカとの貿易で、アメリカの有益な譲歩をしてくれば手のひらを返したように中国に甘いアメを与えかねない。

 

 アメリカが貿易で中国とおいしい取り引きを行ったときには、トランプ氏は、あっさりと香港も台湾もみな中国に与えてしまうだろう。

 

 あと数時間で、大統領選が開票となる。
 日本時間の4日未明には、どういう結果が出るのか。
 それともその日には決着がつかず、さらなる混迷が待ち受けているのか。
 
 ヨソの国のことながら、そうとう気になる。