こんな悲しい別れの歌って、ほかにあるのだろうか?
『外は白い雪の夜』。
この季節になると、必ず思い出す歌のひとつだ。
この歌が発表されたのは、1978年。
私は20代半ばだった。
しかし、当時、私はこの歌をリアルタイムで聞いていない。
後年、YOU TUBEをさまよい歩いていて、偶然この歌を拾った。
たぶん、2016年か2017年ぐらいの冬だったと思う。
だから助かった。
もし、1978年当時にこれを聞いていたら、きっと私は、聞きながら号泣していただろう。
それほど、歌でうたわれた情景と、当時の私の心境はシンクロしていた。
どういう歌なのか。
雪の降る夜、人気のないレストランで、男と女が最後の会話を交わす。
男は、その晩、彼女に別れ話を切り出すつもりでいる。
女は、すでにそれを予感し、取り乱さないように男の顔を見詰めたまま、笑顔で覚悟を決める。
歌詞だけ追うと、男が女から去っていく歌だ。
しかし、男だって、女に未練を感じながらも、あえて「別れ話」を切り出すことだってあるのだ。
それは、「このままでは女が去っていくのではないか?」 と男が予感したときだ。
男は、女を食い止める手段を使い果たしたとき、やむを得ず、自分から先に「別れよう」という言葉を口にする。
その場合、「別れ話」を切り出した男の方が女々しいのだ。
それに対し、この歌では、覚悟を決めた女の方が、むしろ凛としている。
しかし、その「凛とした強さ」は、今にも崩れ落ちそうな危うさを秘めている。
あと、5分耐えることができなければ、彼女はテーブルに身を投げ出して泣いてしまうだろう。
しかし、姿勢を正したまま、それをこらえている女の健気(けなげ)さが、なんとも愛らしく、悲しい。
そういう切ない別れを、美しい思い出に閉じ込めるには、やはり雪の夜がふさわしい。
▼ 2002年のライブより