選ばなかった方の選択肢
人間の不幸は、常に、過去の選ばなかった方の選択肢にこだわるところから生まれる。
「あのとき、ああすれば良かった … 」
という思いは、人間なら誰でも持つ。
選ばなかった方の選択肢は、いつまで経っても “輝かしい可能性” を保持したまま記憶の底で凍結している。
でも、もしそちらを選んでいたら、今頃はとんでもない不幸の道を歩んでいたかもしれないのだ。
今の道を選んだからこそ、現状の生活を手に入れることができたのかもしれないのだ。
だけど、そうは思わないのが人間の常だ。
「選ばなかった方の選択肢」は、今となってはすべてが無に帰しているにもかかわらず、残酷にも、試さなかったからこそ残る「可能性」という甘い幻想だけを紡ぎ(つむぎ)続ける。
それが、人間の不幸の源泉である。
それを昔から「My Foolish Heart(愚かなり我が心)」という。
▼ Bill Evans 「My Foolish Heart」 (1961)