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ウクライナ危機で世界の民主主義は衰退する

 
 ついに、ウクライナに対するロシア軍の全面侵攻が始まったようだ。

 

 昼間にテレビを見たときの情報(日本時間14:00のテレビ報道)によると、ウクライナの主要都市数ヵ所で、ロシア軍からと思われるミサイル攻撃が確認され、キエフ近くの空港では銃撃戦も始まったという。

 

 そのときの情報では、さらに黒海に面した軍港オデッサでは、ロシア海軍の上陸準備が終了しているとか。

 

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 ウクライナ情勢を分析した専門家たちの予想を覆して、どうやらプーチン大統領は、全ウクライナを支配権に置こうという方針に舵を切ったようだ。


 そうなると、ウクライナという国は地図上から消え去り、ロシアは、冷戦前のソ連時代の版図を大幅に回復する可能性が非常に高まったといえる。
  

 
 一連のテレビ報道を見ていると、ウクライナ併合に踏み切ったプーチン氏の心理を解明することに時間を割いた番組もあった。
 それによると、彼は30代の後半、東ドイツKGBの職員としての仕事についていた。
 
 そのときに、彼はベルリンの壁の崩壊(1989年)を経験した。
 彼が仕事をしていた東ドイツソ連系の施設には、西側の市民がいっせいになだれ込み、ソ連系の職員に対して “乱暴・狼藉” の限りを尽くしたという。


 プーチンはそういう状況のなかで、銃を携帯したまま身の保全に腐心したともいう。

 

 それを説明したニュースキャスターは、そのとき彼を襲った恐怖が、「西側の諸国に対する不信と復讐心を育てた」とも。

 

 この話がどれだけ信頼性に足る話なのか。
 仮に事実だとしても、かなり誇張されているのではないかという気もするが、欧米流の “民主主義” 思想に対して、プーチンという人がそうとう強く反感を抱いている政治家だということだけははっきり伝わってくる。

 

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 今われわれに突き付けられているのは、欧米流の民主主義という思想が絶対的なものではないという冷厳な事実だ。

 

 戦後70年、日本はアメリカとの同盟を強化し、アメリカ流の民主主義というものを至高の理念として受け入れてきたが、気がつけば日本は、ロシアのプーチン習近平の中国、北朝鮮金正恩といった “非民主主義” 的なリーダーたちの包囲網にさらされている。

 

 彼らは口々に同じことを言う。
 「アメリカの掲げる民主主義というのは過去の遺物だ」
 と。

 

 では、何が新しい政治思想なのか。

 

 それこそ、今のロシアや中国が進めている中央集権的な権威主義政策だと彼らは明言する。

 

 そういう思想の根底にあるのは、
 「民主主義などという非効率な政治思想よりも、有能な独裁者による国家統治の方が、経済的発展と支配の効率化が一気に進む」
 というものである。

 

 事実、経済発展に問題を抱えている開発途上国では、のきなみ非民主主義国家が勢力を伸ばしている。


 ヨーロッパでは、ロシアとの蜜月を謳うベラルーシが筆頭だが、軍政権が国を支配したミャンマータリバン政権が復活したアフガニスタンなどアジア圏でも非民主主義を掲げる国が勢力の伸張が目立つ。

 

 さらに、経済的に貧しい中南米諸国でも、民主主義が根付く気配がまったく見えない国が輩出している。 

 実際、2019年の調査(スウェーデンの調査機関VーDem)によると、世界の民主主義国・地域が87ヶ国であるのに対し、非民主主義国は92ヶ国と、民主主義国の衰退を指摘する声もある。

 

 この調査の信頼性に関して今は問わないが、われわれ日本人も、「民主主義のメリットとデメリット」を再度問い直さないとならないところまで来ていることは確かだ。
 そこまで覚悟しないと、「われわれの国は民主主義国家だ」などと盲目的にいい張ることも難しくなってきた。
 
 民主主義か? それとも非民主主義か? という選択は、国家の政治体制の問題だけに収まらない。


 それは経済活動とも連動している。

 

 経済的困窮にあえいでいる国に、民主主義的が成熟していくことを待つ余裕はない。
 アフリカ諸国や東南アジア、中近東、中南米などの経済が弱体している諸国では、経済的に強固な国からの支援を受けて、取り合えず自国のインフラなどを整備することが急務となる。

 

 そこに手を伸ばしているのが中国である。
 中国はすでにそうとう前から、「一帯一路」構想に関係する東南アジア、中近東に対して、多額のインフラ投資を呼びかけ、強力な経済支援を約束している。

 

 こういう中国の支援を受けた国は、やがて中国経済への依存をいっそう高め、中国政府と親密な関係を取り結ぶ “非民主主義政権” を強固にしていく可能性が高い。

 

 実際、今、「非民主主義国家」だけがお互いに依存しあうブロック経済への動きが強まっているのだ。

 

 1989年の「ベルリンの壁崩壊」以降、東西冷戦を終わらせた西側諸国は、「資本主義の大勝利」とうかれまくった。

 

 それによって出現したのが、地球全体を大規模な交易圏と考えるグローバル経済の流れだったが、そのグローバル経済が行き詰まり、世界は再びこぢんまりとした自国経済優先主義に回帰していった。

 

 その先鞭をつけたのが、アメリカのトランプ政権だったが、このとき、アメリカと覇を争った中国が巨大な経済圏を確立して周辺国を呑み込み始めた。

 

 今起こっているのは、この中国とロシアの経済的結合である。

 

 どちらもアメリカを敵に回すことで、経済制裁を受けている。
 しかし、中国とロシアが二国共同でブロック経済圏を打ち出せば、どちらの国も、もうアメリカやEUを怖がることがない。
 ともに自国内に強力な消費地を確保できるのだから、それだけで経済を回すことが可能となる。

 

 この構造に、北朝鮮もすぐ反応するだろう。
 つまりアジア圏に、中国共産党北朝鮮、さらに旧ソ連のような共産主義にシンパシーを持つ国々が再結集してくることになる。

 

 これが長期的独裁政権を目指す「非民主主義国家」群による一大経済ブロックを形成することになる。

 

 これらの経済ブロックでは、それぞれの国が自国内の経済振興に力を入れていくだろう。
 
 その中には武器製造も当然含まれる。
 特にロシアは、アメリカに次ぐ軍事大国を維持するために、今後も最新兵器の研究と生産に多額な資金を投入していくだろう。

 

 そういう軍事産業を維持するため、ロシアは、今後中南米などの貧しい国に、最新のミサイルを安い価格でどんどん輸出していくかもしれない。
 北朝鮮も、すでに自国の武器をこっそり第三国に密輸している。
 
 こういう構造が続く限り、戦争を回避する名案はますます遠のいていく。