言葉を誤って覚えている、ということがよくある。
人の話す言葉や、テレビなどから流れてくる言葉を、よく聞きもせずに、先入観で覚えてしまうからだ。
自分の場合は、特にそういうのが多い。
5~6年ほど前だったか。
「デング熱」という病気が流行ったことがあった。
蚊が媒介となって、高熱を発するウィルスをもらってしまう病気だが、てっきり「テング熱」だとばかり思い込んでいた。
「蚊に刺されて、鼻が天狗(てんぐ)みたいに腫れてしまう病気なんだろう」
と思い込んでいたが、カミさんから、「あれはデング熱というんですよ。恥ずかしいことを人前で言わないように」と諭された。
中央自動車道の長野県あたりに、「中央道原」というパーキングエリアがある。
そこを通過するたびに、「ちゅうおう・どうげん」だと思い込んでいた。
このまえ、そのPAに入ってはじめて気が付いた。
「ちゅうおうどう・はら」と読むのである。
でも、「ちゅうおう・どうげん」といった方がカッコいい。
「たけだ・しんげん」とか「さいとう・どうさん」みたいに、戦国武将の名前のように響くではないか。
本当のことを知って、ちょっとガッカリしたが、考えてみたら、「どうげん」と読ませる方に無理がある。
ま、自分の注意不足でしかない。
昔、「生姜焼き」という言葉を「なましょうが焼き」と覚えていた時期があった。
だから、食堂などに入ったときには、
「豚のなましょうが焼き定食をください」
などとよく言っていたものだ。
それを聞いたウェイトレスが、「普通のしょうがやき、でいいんですね?」とか、「焼いていいんですよね?」などと念を押すので、“バッカじゃねぇの?” と怒っていたが、これも「生姜」という漢字自体が「しょうが」と発音することを後から知った。
「生しょうが焼き」じゃ、ウェイトレスも困っていただろうな。
「胡散臭い」という言葉がある。
発音すると、「うさんくさい」になる。
しかし、胡散(うさん)の「胡」の字が、胡麻(ごま)の「胡」の字だったので、早とちりして、人にはよく「ごまくさい」としゃべっていた。
ごまくさい。
本人は、「まじりっけのある不純物」というような意味で使っていたのだが、聞いた人たちは、みなポカンとしていた。
何やら、新しい言葉のように思えたのだろう。
ある日、後輩を相手に、この「ごまくさい」を連発したことがあった。
その後輩は、私のことを本をよく読む人間だ思い込んでいたから、知らない言葉を教えられたように神妙に聞いていた。
だから、そいつの顔を見ながら、ますます調子に乗って「ごまくさい」を連発した。
「うさんくさい」という正しい読み方を知ってから、そいつの顔を思い出すたびに、恥ずかしい記憶がよみがえる。
まさに、「きゃっと叫んでろくろ首」。
しかし、ひょっとしたら、そいつは新しい言葉でも覚えたつもりで、その後、人に対して「ごまくさい」という言葉を使ったかもしれない。
私のような人間が、ものを書くというのは怖いことだ。
物書きとしては失格だ。
もしかしたら、このブログでも、“勘違い言葉” を気づかずに使っているのではなかろうか。
見抜いた方は、遠慮せずに指摘してください。
参考記事 (↓)