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オリンピックにおけるアメリカ勢敗退の理由

 

 今回の東京オリンピックでは、アメリカ国歌(「星条旗よ永遠なれ」)をあまり聞かない。
 それだけ、アメリカの金メダル獲得の頻度が減ってきているわけだ。

 

 スポーツ界における “アメリカの凋落” 。

 それまで、アメリカの絶対優位を伝えられてきたスポーツ種目で、アメリカの敗退が目立つようになってきたのだ。

 

 その最初の例は、7月27日に行われた日本とアメリカの女子ソフトボールだった。
 この日、日本の女子チームは2対0でアメリカを破り、「強豪」といわれたアメリカを下して金メダルを獲得した。

 

 さらに、8月2日、横浜球場で行われた男子野球の準々決勝では、日本チームが延長10回に、アメリカを7対6で破って、準決勝進出を決めた。

 

 同じ日、女子サッカーの準決勝では、カナダとアメリカが対戦。
 カナダチームが、FIFAランキング1位で、2019年女子ワールドカップ王者のアメリカを下して決勝進出を果たした。

 

 バスケットボールに関してはどうか。
 7月25日に行われたフランスとアメリカの予選リーグでは、なんとフランスがアメリカを83対76で破り、アメリカのオリンピック連勝を25でストップさせてしまった。
 アメリカはそれまで3大会連続金メダルを獲得しており、この東京オリンピックでも無敗が確実視されていたのだ。 

 

 陸上競技においても、アメリカが他国の選手を圧倒するという展開にはなっていない。


 1984年のロサンゼルス大会以来、アメリカの五輪における獲得金メダル数は毎回世界トップであり、テレビ中継を見ていても、ゴールテープを切るアメリカ選手の姿をいつも見てきた。
 しかし、今大会では、アメリカ人選手の勢いが見られない。
 
  
 アメリカの凋落は、現地におけるテレビの視聴者数にも反映されているらしい。
 7月27日までの視聴者数は、前回リオデジャネイロ五輪と比べ42%減少しており、広告主の間で不安が広がっているという。
 
 それでは、なんのために、酷暑の東京で競技をスタートさせたのか分からない。
 この過酷な時期に五輪開催を選んだのは、すべてアメリカのテレビ中継時期と連動させたかったからではないか。

 

   
 今回のオリンピックにおいて、アメリカ選手たちの勢いが弱まったように感じられるのは、いったいどういう理由によるものなのだろう。

 

 前回のリオデジャネイロ大会から東京大会に至るまでの4年の間に、アメリカ社会で、何かが変わったのだ。
 
 この4年というのは、まさにトランプ大統領の治世だった。
 
 大統領に選出されたトランプ氏は、さっそく難民やイスラム圏から入国する人々を制限する大統領令にサインした。

 

 アメリカのメジャースポーツというのは、実は外国選手たちによって支えられていた。
 実際、NBA(米国プロバスケットリーグ)の全選手の約25%は外国人であり、人種的には黒人も多い。

 NFL(米プロフットボール)の選手構成も外国人が多く、彼らのなかには、アメリカの人種差別などに対する不満を持っている人が多い。

 

 そんなNFLの選手たちが、かつて国歌斉唱のときに人種差別に抗議する意味で起立しなかったことがあった。
 トランプ大統領は、これを怒り、その選手たちを汚い言葉で侮蔑した。

 

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 そういうことが繰り返されるうちに、外国人スポーツ選手の間に、トランプ氏への批判が高まるようになった。


 それまで、主要スポーツの優勝チームがホワイトハウスを訪問することはアメリカでは重要な習慣となっていたが、トランプ氏の就任以来、この行事を辞退するスポーツ選手が後を絶たなくなった。

 

 この東京五輪においても、トランプ元大統領は、トランスジェンダーの選手が参加したことを集会で批判した。
 「多様性と調和」を訴える東京五輪の趣旨を真っ向から非難したことになる。
 すでに「大統領」の任期を解かれても、彼は人種差別とジェンダーへの偏見を捨てようとしない。

 

 構成員として、移民や外国人、黒人などを多く抱えたアメリプロスポーツ界が、こういうトランプ氏の批判や非難を免れたとは言い難い。

 

 彼の4年の任期が、東京五輪でのアメリカ勢凋落を招いたといえるのではないか。
 詳しく調べたわけではないが、直感的に、そんなふうに感じている。