アートと文藝のCafe

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高田純次になりたい

 

 あなたには憧れのシニアタレントって、いる?  
 たとえばさぁ、「年取ったら、こんな人間になってみたい」というような人とかさぁ。
 そういう人、いる?

 

 俺の場合は、高田純次。 
 いま75歳だよね、この人は

 

 で、俺も75歳になったときには、高田純次みたいに、「いつも人をおちょくっている老人になりたい」と思っているわけ。   

 

 相手をおちょくって、嫌味いって、からかって。
 それなのに、からかわれた人間からまったく恨まれず、むしろ喜んでもらえるというのが、この高田純次の才能というか人柄だよな。

 

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 もう5年ほど前のこと。
 「肺高血圧症」の手術のために病院に入院したときがあったの。
 その間、2ヶ月。
 ヒマだから、ベッドの上にあぐらかいて、ずっとテレビを観ていたわけ。

 

 お気に入りは、朝の10時からテレビ朝日で放映される高田純次の『じゅん散歩』。

 

 今じゃこの時間帯の看板番組みたいになっているけど、俺が入院していたときはさ、ちょうどそれが始まった頃だったのよ。

 

 もともとこの散歩番組は、地井武男氏が出演していたのかな。
 タイトルは『ちい散歩』だった。

 

 次が加山雄三
 『若大将のゆうゆう散歩』とかいうタイトルがついていたと思う。

 

 いずれも関東ローカルの番組で、地井氏も若大将も、東京、神奈川、埼玉のような首都圏の商店街を歩き、ぶらっと立ち寄った店の主人と短い交流をするという、まぁ、どちらかという地味な番組だったんだよな。

 

 それが、高田純次に代わってから、にわかに “お笑い番組” の様相を呈するようになったわけ。
 立ち寄った店ごとに、奥から出てきた主人にかます高田純次の一言がきつい !

 

 たとえば、ぶらっと入る店のドアを叩くときの挨拶。
 「こんにちわぁ、ちょっと入っていい? 怪しい者ですが」

 

 ま、これは定番の言葉なんだけど、出た来た主人が年配女性の場合は、


 「まぁ、可愛い女の子。お母さんいる?」

 

 で、店の主人が中年男性の場合。 
 「この店、いかにも古そうですけど、ご主人は何代目?」
 「私は2代目です」
 「あ、そう。2代目って、たいてい先代の店をつぶしちゃうんだよね」

  
 街中で、向こうから4~5人のオバサンが歩いてきたときは、 
 「おぉ、久しぶりに女子大生の群れに会ったな。あなたたち、どこから来たの?」 

 

 オバサンたちが笑いながら、
 「あそこの保育園から来たんです」と答える。
 すると、じゅんちゃん、
 「じゃ児童の方々?」

 

 商店街の裏道に、手押しポンプの井戸があると、すかさずそのポンプを押してみて、
 「井戸ってのはね、水が出ても出なくても、こうするもんなんですよ」
 と、いたずらしながら通り過ぎる。

 

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 たまに東京近県を離れて、地方に行くこともある。 
 三重県伊勢神宮がロケ先だったときだ。

 

 高田氏、茶店で旅行中の女子二人組に話しかける。
 「あなたたち、どこから来たの?」
 「三重です」 
 「目は二重だけどね」

 

 テレ朝のアナウンサー室を訪ねたとき。
 社員たちのデスクが並ぶ室内にズカズカと入り、いきなり一人の女子社員に声をかける。
 「あなたは独身?」 
 「はい。そうです」
 「じゃ、この部屋にいる男性社員のなかで、あなたがいま旦那さん候補として狙っている男はどれ?」


 散歩中、たまに、高田純次を知っているオバサンとすれ違うこともある。
 「あ~ら高田さん。いやぁ、本物だわ」 
 「どうです? ナマ高田は?」 
 「やっぱり本物の方がいいですね(笑)」
 「え、なんて言ったの? 最近耳が遠くなっちゃって」
 「本物の方がいい(笑)」
 「そう ! 抱かれたいくらい?」

 

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 その口ぶりの軽さ、いい加減さ、無責任さ。 
 5~6歳ぐらいの悪童のいたずらを、枯れた老人の表情でやってのける。  

 なんという自由人! 

 

 観ていると、ほんとうにこういう老人になりたいと思うのだ。

 

 

 だから入院していたときに『じゅん散歩』を観ると、病棟にいる看護師さんたちに話しかける言葉が少し変わってしまった。


 「町田さん、採血の時間です。今日は全部で4本取ります」 
 「あなたなら、さらにもう1本余分に取ってもいいよ。後で飲んでみて。おいしいから」

 (ワシの本名は町田である)

 「町田さん、これから心電図の検査です。検査室までは車椅子で行きますね」
 「ついでに家まで送ってくれる?」

 

 まぁ、こんなヨタを言っても、相手に好かれるようになるには、俺の場合はまだ修業が足りなかったけどな。

 

 でも、今後の目標はいちおう高田純次 ということで。