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コロナによる経済的疲弊は日本に何をもたらすか

  新型コロナの感染拡大を防止すための「緊急事態宣言」の解除が始まったことを機に、コロナ禍による疲弊した経済をどう立て直すかという議論も活発になってきた。

 

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 コロナ禍をやり過ごすために「自粛生活」を強いる指導方針がこのまま続くと、日本の経済的損失額は100兆円を超えるという専門家の試算もあるという。

 

 夏を迎える頃には、日本におけるコロナ騒動もいったんは沈静化するかもしれない。
 しかし、そうなっても、経済活動が元の状態に戻るかどうかを疑問視する声は多い。

 

 フランス文学者であり、翻訳家でもある内田樹(うちだ・たつる)氏は、4月22日のネットニュースで、コロナ禍による「中間層の没落」を懸念している。

 

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 コロナ騒動による営業自粛が広がった現在、基礎体力のある大企業はなんとか生き残れても、中小企業や自営業の多くは、倒産か廃業に追い込まれる可能性が高い。

 

 それは、
 「ささやかながら “自立した資本家” であった市民たちが、無産階級に没落することを意味する」
 と内田氏はいう。

 

 「このままだと、日本社会は『一握りの富裕層』と『圧倒的多数の貧困層』に二極化する」
 とも。
 
 
 日本人の階層が二極化していくとどうなるか。

 

 「民主主義が機能しなくなる」
 と内田氏。

 

 そもそも民主主義というのは、所得水準も教育レベルも均等化された “分厚い中間層” によって支えられる面がある。
 高度成長期の日本が、まさにそういう状態に近かった。

 

 しかし、中間層がやせ細って、貧困化が進めば、一部の富裕なエリート階級と、没落した中間層との格差が広がり、最大公約数の意見をまとめようとする民主主義的機能が衰弱する。

 

 そうなると、
 「富裕層は、お互いの縁故を使って政界やビジネス界を牛耳るようになり、一部の人たちが経済的な富を排他的に独占する傾向を強める」
 と内田氏はみる。
 
 
 では、コロナ禍によって没落を余儀なくされたかつての中間層は、そういう社会にどう立ち向かおうとするのか。

 

 社会を是正するような姿勢をしっかり保ち、選挙やデモなどの手段によって、自分たちと同じ境遇に陥った “仲間” と共闘できるような人たちはいい。

 

 しかし、もっと安易な手法で自分たちの意見を主張しようという人も出てくる。

 

 つまり、口先だけうまいポピュリストのリーダーを担ぎ上げ、その助けを借りてうっ憤を晴らそうとする人々も出てくることになる。

 

 そう危惧するのは、日本大学危機管理学部教授の先崎彰容(せんざき・あきなか)氏だ。

 

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 先崎氏は、5月2日に放映された「プライムニュース」(BSフジ)に出演したとき、次のように語っていた。

 

 「(今のような政治的・社会的リーダー不在の時代のなかで)発言力を強めて来るのは、ポピュリストだと思う。
 そういう人は、実はあまり権力の実態を知らないことが多い。だからこそ、人を惹き付ける話術を無責任に駆使できる」

 

 つまり、没落して憤懣がたまった中間層の憤りを、そういう人が平気で吸収し、世論に火をつけることになる。

 

 それは、どういう事態を招くか。
 ポピュリストの扇動にやすやすと乗った人々のエネルギーが、民主主義的「理性」とは程遠いものになることは火を見るより明らかだ。 
 
 
 この日の「プライムニュース」で、先崎氏がもっとも危惧したことは、感情的に高揚した人々の情熱が見境もなくエスカレートしていくことだった。

 

 具体的には、自治体の自粛要請にもかかわらず、営業を続けるパチンコ店、あるいは、居酒屋やバー、キャバレーに対して、義憤に駆られた人々が嫌がらせをしたり、非難めいた落書きをする “自粛警察” 的な動きのことをいう。

 

 こういう “自粛警察” 的な行為は
 「自分が正義に加担している」
 と錯覚している分だけ、よけい始末が悪い。

 

 先崎氏はいう。

 

 「誰もが、正義を守るための行動と錯覚して、嫌がらせや暴力を奮うのは、テロリストと変らない。
 そういう行動の先には、発展途上国の『海賊や民兵の正義』がある。
 義憤に駆られるあまり、社会秩序を乱すほうが、もっと厄介だ」

 

 とにかく、コロナ騒動で、われわれは( というか世界中の人々が)みな殺気立っている。

 

 そういうときに、庶民の気持ちを逆なでするような発言を行うタレントや文化人にはほんとうに腹が立つ。