世界規模で蔓延しているコロナウイルスの感染が終息する気配がまったく見えない。
いつまで続くのか。
あるいは今後、さらなる予想を覆すような猛威が迫ってくるのか。
未知のウイルスのため、専門家にもそれが分からない。
ただ、はっきりいえることは、これを機に、これまでとは違った消費スタイルが生まれてくることだけは確かだ。
「巣ごもり消費」
あるいは
「内向き消費」
などという言葉がすでにマスコミでは使われているが、ウイルスに感染するリスクを避けるため、野外に出ず、家に閉じこもる消費スタイルが広がり始めている。
テレビニュースを見ていたら、子供たちの学級閉鎖が始まったことを機に、調理の要らない冷凍食品の購買率が高まり、その貯蔵場所として、新たに小型の冷凍庫を買い求める傾向も出てきているらしい。
都心の居酒屋やライブハウスも閑散としてきたらしいが、その分職場に行かず、テレワークで仕事を済ませるお父さんを中心に、家のなかで子供たちとカードゲームなどに興じる家族が増えているとか。
外から内へ。
繁華街から家へ。
人々の消費エリアが変わり始めている。
これは、世界構造の変化だという人もいる。
そもそもコロナウイルスの世界的蔓延は、世界経済がグローバル化した結果だという。
経済のグローバル化のなかで、世界的なサプライチェーンとしての中国産業が驚異的な発展を遂げた。
当然、そのことによって、中国の「人間」と「物質」が世界の企業と交わりを深めることになった。
コロナウイルスの蔓延は、その交流の深度と関係している。
ヨーロッパでいちばん汚染が深刻なのは、習近平主席の「一帯一路」構想に積極的に手を組んだイタリアだった。
アジアとヨーロッパを結ぶ “新シルクロード” ともいうべき「一帯一路」は、人と物質や情報の伝達を盛んにするだけでなく、中国のウイルスもまた大量にヨーロッパに運んだ。
このような経済のグローバル化が、今それぞれの国でのウイルス遮断対策によって寸断されようとしている。
時代が前に戻り始めたともいえる。
つまり、世界各国は人と物の出入りを制限し、国境を閉ざして自国中心のブロック経済へと回帰した。
もちろん、これは一時的なものだ。
ウイルス汚染が終息し始めると、世界経済は再び中国を軸としたグローバル体制を回復させるだろう。
しかし、そうなったとしても、コロナウイルスの蔓延によってでき上ってきた新しい消費スタイルはそのまま定着していきそうな気がする。
すなわち、前述した “内向き消費” だ。
ウイルス汚染を防ぐために大規模イベントがのきなみ中止されるなか、あえて無観客イベントを行い、それをYOU TUBEにアップする人たちも目立ってきた。
つまり、人々の遊びのスタイルが、ネット中心に移行し始めてきたのだ。
もちろん、この傾向は今に始まったことではないが、若者たちの遊びのスタイルがコロナウイルスの蔓延を機に、ネットを軸に展開し始めたことは間違いない。
もちろん、今後少しずつライブ活動なども復活していくはずだが、だとしても、ネットの動画配信の比重が低くなることはないだろう。
このような “内向き消費” を一概に否定的に見ることもないように思う。
なぜなら、“内を向く” ことによって、個人の内面生活を充実させるきっかけが生まれる可能性もあるからだ。
たとえば、外に行かない時間を利用して、本を読む。
あるいは、動画配信などを利用して、映画・音楽に親しむ。
また、親・兄弟などという家族と向き合って、これまで語り合ったことのないテーマを議論する。
今まで “面倒くさい” と避けてきた課題をこのさい見直してみようという機運が生まれたとしたら、それは悪いことではない。
特に、本や新聞というオールドメディアに接することはとても重要だと思う。
それらの活字文化と格闘することは、人間の想像力を養う。
“東大王” としてクイズ番組で人気を集めている学生たちの勉強方法を知る機会があったが、彼らは例外なく、幼少期から活字文化に接していた。
私自身は、東大生の “エリート臭さ” というものが苦手なのだが、彼らの本に親しんできた体験は、クイズを解くための “ひらめき” には絶対欠かせないものだと分かった。
「クイズ」というのは、出題されてから答を探すものではない。
出題される前に、その問題が要求する「解」をイマジネーションの力で推理しなければならない。
たとえば、歴史問題で、「中国大返し」という言葉が出てきたとき、問いが要求するのは「秀吉」という人物なのか、それとも「山崎の戦い」という戦場なのか、あるいは「明智光秀」という対戦相手なのか。
それを、出題される前に、イマジネーションを駆使して予想しなければならない。
そのイマジネーションはどこから来るのか?
それは、本や新聞といったオールドメディアの読書量から来る。
コロナウイルスで外に出られないと嘆くよりも、これを “チャンス” と思い、今まで読まなかったような本を手に取ってみる。
そうすると、心のなかで、何かが変わる。
「ピンチ」を「チャンス」に変えるというのは、そういうことだ。