私も今年の4月で69歳になろうとしているわけだけど、昔からつきあっていた友人たちも、だいたいそんな年頃だから、たまに会うと、話がジジ臭くなる。
老いの兆候が現われてきたことに対する情報交換になりがちなのだ。
「あ、お前もそうなの? 最近、俺もモノの名前がすぐ出てこなくてさぁ」
「ボケが始まったのかもな。カミさんとの会話なんか、あれ、これ、それ … だけになっちゃった」
… ってな会話が増えるのである。
こういうのを “老人性症候群(シンドローム)” といってもいいのかもしれない。
「老人性症候群」とは、医学的にいうと、「認知症」、「徘徊」、「転倒」、「尿失禁」などを指すらしい。(いやな言葉が並んでいるなぁ … )
ま、そこまでいかなくても、軽度の「認知症」や「転倒」などは、少しずつ経験するようになってきた。
とにかく、人の名前とか新しい商品名みたいなものが、覚えたと同時に記憶のかなたに飛んでしまう。
ところで、そういうのって、進み具合をチェックする方法があるのだろうか?
自分なりに考えてみたが、次のような症状が出たきたら、要注意だ。
※ 下のテストは、私自身が作ってみたもの。
簡単だったよ。
全部自分のことだから。
① すぐ物をなくす。
5分ほど前に見ていた身の回りの物が、5分後にはなくなっている。
「あれ、今さっきここにあったのになぁ … 」
と、探し物が多くなる。
大事なものから先に、どんどん目の前から姿を消していく。
たぶん、大事なものだから、すぐ見つかるように “目立つ” ところに置き直したりしているのだ。
しかし、そのことを忘れて、結局いつも置いてある場所を探す。
当然、ない !
パニックになる。
パニックになると、新しく置き直した場所などまったく視野に入ってこない。
② 人の名前が、どんどん頭の中から消えていく。
だから、街中などで、偶然知った顔に出会ったときに困る。
名前が思い出せないから、なるべくその人の名前を口に出さないような会話になる。
無難なのは、「お元気ですか?」などという挨拶か、天候の話。
毒にも薬にもならない会話が増える。
そういうことを繰り返しているうちに、人の付き合いもだんだん淡泊なものになっていく。
③ 床に落ちた物を拾うだけでも、大変な努力を要するようになる。
腰をかがめるのが、億劫になるのだ。
だから、地面に落ちた10円玉を拾うだけのことでも、吹雪の日に防寒着を着こんで野外に出るくらいの大げさな覚悟が必要になる。
そのため、知らず知らずのうちに、
「ドッコイショ」
「ヨイショ」
という言葉が口をつく。
④ 些細なことで、怒りやすくなる。
レストランなどで、ウェイトレスのメニューの渡し方がぞんざいだったとか、水を入れたコップを乱暴に置いたとか。そんなことだけで、ちょっとムカっとしたりする。
「昔の店員と違って、最近の若い者は接客態度がなっていない !」
と怒るわけだが、要するに「年寄りは世の中の “余計者” に見られている」というヒガミが、そういう気持ちをあおり立てるんだろうな。
⑤ スポーツ選手などを比較するときに、同世代の選手を比べるよりも、昔の選手と比較することが多くなる。
「○○選手は “記録” を残すタイプではなく、長嶋茂雄のような人々の “記憶” に残るタイプだよな」
… とか人に話すんだけど、例に出す選手の名前を知っている人がだんだん少なくなっていることに気づかない。
⑥ I Tの革新スピードに付いていけなくても平気になる。
ネット・コミュニケーションがだんだん億劫になってくるのね。
だから、ツィッターとフェイスブックの違いもよく分からない。ましてや「LINE」って何こと?状態であるが、別にそれで困らなくなる。
⑦ 身の回りのゴミがやたらと増えていく。
片付けるのが面倒くさくなっているのだ。
最初は机の周りがゴミだらけになり、やがて床がゴミだらけになり、最後はゴミ屋敷になる。
⑧ 同じ年ぐらいの老人と、ついつい自分を見比べてしまう。
で、相手の頭髪の濃さとか、腹の出具合とか、足取りの状態などを比較して、「勝ったな !」とつぶやくことが多くなる。
で、たいていの場合、「負けたな !」と思うことはない。(負けそうな相手は、無意識のうちに比較することを避けている)
⑨ (男の場合)若い女の店員や看護師などから、ちょっと優しい言葉をかけられるだけで、すぐさま「俺に好意があるのかな?」と勘違いするようになる。
女を狙うときの “男としてのハンター能力” が鈍ってきて、現状認識が甘くなるからだ。
⑩ (男の場合)若い女性( … たとえばAKB的なアイドル系女子たち)から好意を寄せられることを諦めているから、同世代ぐらいの熟女(五月みどり・吉永小百合たち)の色香に敏感になってくる。
しかし実生活においては、人生の酸いも甘いもかみ分けた年齢の女性たちが、容貌も衰えた同世代のジジイに反応することはまずないので、たいていは片思いに終わる。
その結果、老人ストーカーが増える。
⑪ 成人した子供が期待外れに終わったと思うことが多くなり、そのため、孫を見るごとに、「この子は将来大物になる」という思い込みを強くする。
⑫ 駅のホームでは、近くの階段を上がるより、時間がかかっても遠くまで歩いてエスカレーターに乗る。
ま、年老いてきて、階段を上がる体力が衰えてきたということもあるのだろうけれど、要するに老人はヒマなのよ。
さて、ご同輩よ。あなたは①から⑫のうち、何問当てはまりましたか?
5問以上当てはまったら、もう “老人性症候群” だよ。
しかし、以上のことが自覚できれば、そこを注意するだけで、まだまだ若さを取り戻すことは十分に可能。
元気な老人というのは、みんなそうやって、老いの自覚にめげずに奮闘しているわけね。