アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

映画

戦国自衛隊1549

超傑作と超駄作は「珍しさ」において並び立つ? 『戦国自衛隊1549』 土曜日の午後(2020年6月27日)、『戦国自衛隊1549』がWOWOWシネマで放映されていた。 突っ込みどころ満載の映画だった。 『戦国自衛隊』は、1979年と2005年に二度映画化されており、79年…

『雲霧仁左衛門』と「陰翳礼讃」的な日本美学

NHK総合の「土曜時代ドラマ」枠で放映されている『雲霧仁左衛門』が楽しみになった。 ハードディスクに録画し、のんびりできる時間を見つけて、ゆっくり見ている。 もとは、BSプレミアムで、2013年から放送されていたものらしい。 いま流れているのは、その…

レールのある風景(RAILWAYS)

中井貴一が主役を務める映画『RAILWAYS(レイルウェイズ)』(2010年公開)を観た。 BSのWOWOWで。 途中からなんだけど。 49歳の男性がエリートサラリーマンの生活を捨て、故郷に戻って、小さい頃からの憧れであった「電車の運転手」としての再スタートを切…

誰か『ワンピース』の面白さを教えてよ

BSのWOWOWシネマで、『ONE PIECE(ワンピース)』の劇場版アニメを延々と放映していた。 コロナ禍のせいか、最近のWOWOWシネマは、ステイホーム中の “子供&若者” 向けの企画ばかりで、私のような年寄りにはまったく面白くないのだけれど、そういうときに、1…

「さらば愛しき女よ」

映画批評 映画「さらば愛しき女よ」のけだるく甘い切なさ 原題、『Farewell, My Lovely(フェアウェル・マイ・ラブリー)』。 レイモンド・チャンドラーが1940年に書いた同名小説をディック・リチャーズ監督が1975年に映画化した洒落た作品である。 ハードボ…

映画『嵐を呼ぶ男』の主題歌は隠れた名曲だ

両親は日本人なのに、突然変異的に西洋人のハーフのような顔つきで生まれてしまった子どもがいる。 音楽にも、そういうものがある。 出自は歌謡曲ながら、奇妙に “洋楽っぽい” 部分が突如顔を出すというような曲があるのだ。 昭和歌謡に多い。 こういう曲に…

秀逸なセリフ劇 『仁義なき戦い』

会社勤めを始めた頃、まだ友達もいなくて、しばらくは一人で酒を飲むぐらいしか時間をつぶす方法がなかった。 当時住んでいた町は、その名前だけは古くから知られた町だったが、実質的には発展途上の町で、妙に空漠としていた。 お寺の山門のような構えを持…

『第七の封印』という難解な映画の快楽

昔の映画の現代的鑑賞法1 歴史編ベルイマン『第七の封印』 イングマール・ベルイマンが1957年に撮った『第七の封印』は、公開当時から難解であるという批評が多かった。 当時、芸術好きの知識人たちが、さまざまな解釈や議論を展開したらしいが、私は、そう…

三島由紀夫 vs 東大全共闘

この20日金曜日に、『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』というドキュメンタリー映画が公開された。 まだ映画は見ていないが、この討論会の存在を19歳の頃に知っていた私にとって、その場で何が語られたのか、それはいまだに興味の尽きないテーマの一つ…

ターナー、光に愛を求めて

映画批評大英帝国の誕生を絵画で表現した男 2014年イギリス・ドイツ・フランス合作映画原題「Mr. Turner」 日本公開 2015年6月 知的興奮を誘う傑作 美しい映画である。 主人公は、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー。 “人物事典” ふうにいうと、「18…

『2001年宇宙の旅』再び

年末、中学校時代の友人たちと飲む機会があった。 すでに70歳に近い老人たちが集う会だから、半世紀以上の付き合いとなる。 固定メンバーはだいたい4名だが、この日は3人だけの会となった。 中学時代に、小説、評論、漫画などを集めたガリ版刷りの同人雑誌…

『雨月物語』の黄金色に輝くモノクロ映像

この5月12日(2019年)に、女優の京マチ子さんが亡くなられた。 享年95歳。 若い人には、この女優の名を知らない人も多いのではなかろうか。 しかし、邦画がようやく海外の映画ファンに認められるようになった時代を代表する女優として、ぜひその名を覚えて…

正義の恐ろしさを描いた『20世紀少年』

WOWOWで、10年ほど前に公開された映画『20世紀少年』を観た。 テレビ放映されたものは、これまでも一度か二度、部分的に観たことがある。 でも、さほどの興味を感じなかったので、すぐチャンネルを変えてしまった。 しかし、今回その三部作を改めて鑑賞し、…

「東ベルリンから来た女」という映画の美しさ

映画批評『東ベルリンから来た女』 映画は途中から観るものではない、と分かっていても、テレビで放映されている映画の場合は、往々にして途中から観ざるを得ないものがある。 たまたま観た1シーンがものすごく印象的で、「いったいどんな話なんだろう ?」…

人類最後の日を人々は何をして過ごすのか?

映画批評『On the beach 渚にて』 原発事故による「放射能汚染」の話題が出るたびに、思い出す映画がある。 アメリカ映画の『渚にて』( On the beach )だ。 1959年にスタンリー・クレイマー監督が撮った(当時の)近未来SF映画で、まさに地球規模の “放射…

「七人の侍」のような映画は今後100年生まれない

映画批評 『七人の侍』 3月21日に、NHKのBSプレミアムで放映されていた黒澤明の『七人の侍』を、また観た。 「また」という言葉を使ったが、もう5~6回観ている。 それだけ観ていれば、ストーリー展開の細かい部分も覚えるし、登場人物たちのセリフもだい…

映画の話題で知り合った女性

エッセイ・追憶・映画ウッディ・アレン『マンハッタン』 ウッディ・アレンが監督を務め、かつ主演を張った『マンハッタン』が公開されたのは、1979年だった。 公開前から、このクィーンズボロー・ブリッジのベンチの写真が色々な媒体で紹介されていて、それ…

AI 搭載型ロボットと人間は恋ができるか?

映画批評「エクス・マキナ」 「ロボット」が出てくるSF映画とかアニメに興味があって、その手の話題作があると、よく観る。 映画によっては、「アンドロイド」とか「レプリカント」、あるいは「サイボーグ」などと言葉を与えられることもあるが、要は “人間…

ダッチワイフが “心” を持ってしまったら?

映画批評是枝裕和『空気人形』 2009年に公開された是枝裕和監督の『空気人形』。 10年前の作品だが、DVDを借りて、やっと観ることができた。 「空気人形」、すなわちラブドール。 なにしろ、自分には変態的なところがあって、この「ラブドール(高規格型ダッ…

パンクを神話に高めた男の短い生涯   

昔の映画の現代的鑑賞法 映画批評 シド・アンド・ナンシー パンクは嫌いだった 1970年代半ば、パンクロックが生まれて、ニューヨークとロンドンのロックシーンが大きく変わろうとしていた頃、私は「聞く音楽」をなくしていた。 大好きだった黒人ソウルミュー…

I'd Rather Go Blind

むしろ盲目になりたいくらいの悲しさ 映画批評キャデラック・レコード 「恋」って、当人が経験するのが、もっとも感動的なものかもしれないけれど、文学や映画で疑似体験する「恋」にも、なかなか切ないものがあったりする。 特に、優れた「恋の終わり」を描…

アメリカ映画 『バルジ大作戦』

バルジ大作戦とは編集 戦争アクション映画:原題:Battle of the Bulge1965年|アメリカ映画|カラー|175分|画面比:2.20:1(70 mm)スタッフ監督:ケン・アナキン製作:ミルトン・スパーリング、フィリップ・ヨーダン脚本:フィリップ・ヨーダン、ミルト…

映画『フィールド・オブ・ドリームス』

フィールド・オブ・ドリームスとは編集 Field of Dreams1989年|アメリカ|カラー|107分|画面比:1.85:1|MPAA: PGスタッフ監督:フィル・アルデン・ロビンソン製作:ローレンス・ゴードン、チャールズ・ゴードン製作補:ロイド・レヴィン製作総指揮:ブラ…

ゴジラのシルエットに日本の美学を見る

映画批評 1954年。 初代ゴジラが誕生したとき、私は4歳だった。 だから、リアルタイムでは、この記念すべきゴジラ映画第一作目を観ていない。 ただ、この初代ゴジラはたいへんな評判になり、たちまち絵本や漫画はおろか、メンコ、すごろく、かるたなどの当…

インド映画『バーフバリ』の世界観

映画批評 インド映画というものを、はじめて観た。 なんともいえない不思議な感興を覚えた。 映画名は『バーフバリ』。 2015年に制作された歴史ドラマの意匠をまとったファンタジーで、ハリウッド作品の系列でいえば、『コナン・ザ・グレート』(1982年)、…

山の郵便配達

映画批評 1999年に制作された中国映画だ。 日本で上映されたのは、2000年代に入ってからか。 公開中にカミさんが岩波ホールまで観に行ったという。 「信じられないくらい美しい光景が展開する映画だった」 というのが、観てきた後に、カミさんの口をついて出…

弦楽器の罪つくりな美しさ

映画・音楽批評 人間の悩ましい情念の高まりを表現するのに、弦楽器ほどふさわしい楽器はない。 「狂おしい」 という言葉を、もし「音」で表すとしたら、ヴァイオリン、チェロといった弦を使った楽器以上のものはないのではないか。 弦をつかった音楽は、時…

『マッドマックス』の終末感

映画批評 冬の陽射しが、葉を落とした木々の間をかすって、弱々しく地面にたどり着くような淋しい日だった。 かれこれ、30年近い昔のことである。 師走も近いという休日。 あてもなく街をさまよい歩いて疲れ、それでも家に帰る気もしないという中途半端な心…