アートと文藝のCafe

アート、文芸、映画、音楽などを気楽に語れるCafe です。ぜひお立ち寄りを。

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

カラヴァッジオ 『聖マタイの招命』

絵画批評キリストの教えを、「思想」として理解した男マタイ マタイはどこにいる? バロック時代のイタリア人画家カラヴァッジオが描いた『聖マタイの招命(しょうめい)』という絵には、後にキリストの弟子になるマタイという男が、キリストの要請に応じて…

老人度の進み具合テスト

私も今年の4月で69歳になろうとしているわけだけど、昔からつきあっていた友人たちも、だいたいそんな年頃だから、たまに会うと、話がジジ臭くなる。 老いの兆候が現われてきたことに対する情報交換になりがちなのだ。 「あ、お前もそうなの? 最近、俺もモ…

69歳ブロガーの未来予想図

今週のお題 「私の未来予想図」 「未来予想図」ったって、あ~た … 。 わしゃ、あとほんの少しで69歳になるんじゃよ。 「来年、5年後、10年後、どんな生き方を選んでいるでしょう」とか言われたってなぁ、来年70歳。10年後は80歳じゃ。 そういう人間に「未…

アートと文藝のCafe

井の頭公園Cafe 『千(せん)』 このブログのタイトルである「アートと文藝のCafe」。 実は、この言葉を思いついた喫茶店が実在する。 散歩コースとして気に入っているエリアの一つに、井の頭線の「井の頭公園駅」(東京都・三鷹市)がある。 その駅前にある…

山岸凉子 『日出処の天子』

漫画批評魔性を秘めた美少年の妖しさ 「BL(ボーイズ・ラブ)は女性だけのものか?」 と、男性の私はよくそう思う。 というのは、自分が “BL漫画” にとことんハマった時期があったからだ。 男がハマれば、「ストレートなホモってことじゃない?」と言われそ…

二コラ・プッサン『アルカディアの牧人たち』 

絵画批評 人間はいつから「死」を恐れるようになったのか 絵画というものは、基礎的な知識がないと、理解できないものが多い。 特に、近代以前の古典的な西洋絵画の場合は、そこに登場する人物や情景を説明してくれる解説者がいないと、意味が伝わらないこと…

サカナクションの歌詞に秘められた昭和文学

音楽批評山口一郎氏の曲から伝わる「心地良い違和感」 テレビで、日本のロックグループ「Sakanaction サカナクション」のライブ映像を見たことがある。 面白い世界観を表現したステージだと思った。 このバンドのリーダー山口一郎氏には、10年以上も前から注…

アメリカ映画 『バルジ大作戦』

バルジ大作戦とは編集 戦争アクション映画:原題:Battle of the Bulge1965年|アメリカ映画|カラー|175分|画面比:2.20:1(70 mm)スタッフ監督:ケン・アナキン製作:ミルトン・スパーリング、フィリップ・ヨーダン脚本:フィリップ・ヨーダン、ミルト…

My Foolish Heart

選ばなかった方の選択肢 人間の不幸は、常に、過去の選ばなかった方の選択肢にこだわるところから生まれる。 「あのとき、ああすれば良かった … 」 という思いは、人間なら誰でも持つ。 選ばなかった方の選択肢は、いつまで経っても “輝かしい可能性” を保持…

ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ『貧しき漁夫』

絵画批評『貧しき漁師』の豊かな詩情 昔、シャヴァンヌの『貧しき漁師』という絵を見て、とてつもなく感銘を受けたことがあった。 見たのはもちろん実物ではなく、美術書に掲載されたカラーグラビアでもなく、市販の日記帳の片隅に印刷された小さなモノクロ…

奥さんは旦那のことを何と呼んでいるのか

世の中の奥さんたちは、旦那さんに声をかけるとき、なんて呼んでいるのだろうか。 もちろん「ヘイ・ユー」とか「お~い(お茶)」とかいうわけはないだろう。 なんとなく想像できるのは、「お父さん」か「パパ」だ。 もちろん、子供がいる夫婦の場合だけど。…

ポール・ドラローシュ 『レディ・ジェーン・グレイの処刑』

絵画批評 絵画史上まれなる恐ろしい絵 19世紀の画家ポール・ドラローシュの描いた「レディ・ジェーン・グレイの処刑」は、世にも恐ろしい絵である。 私がこの絵を見たのは、ちょうど30年前だ。 朝日新聞の日曜版に掲載されていた『世界 名画の旅』という連載…

池田晶子の短い生涯

池田晶子とは編集 1960年生まれ。慶応大学文学部哲学科卒業。専門用語を使わず、哲学するとはどういうことかを日常の言葉で語る。 著書「14歳からの哲学」は27万部のベストセラーとなった。 2007年2月23日、腎臓癌のため死去。46歳。 当時連載していた「週刊…

映画『フィールド・オブ・ドリームス』

フィールド・オブ・ドリームスとは編集 Field of Dreams1989年|アメリカ|カラー|107分|画面比:1.85:1|MPAA: PGスタッフ監督:フィル・アルデン・ロビンソン製作:ローレンス・ゴードン、チャールズ・ゴードン製作補:ロイド・レヴィン製作総指揮:ブラ…

教科書に出てくる “泣ける名作”

文芸批評 この不条理感が子供に分かるのか? 2016年の1月から3月まで、約2ヶ月ほど肺の病気で入院していたが、そのとき読んで印象に残った本のなかに、『もう一度読みたい教科書の泣ける名作』(学研教育出版 2013年)という本があった。 「わが国の小学…

桐野夏生 編 『我等、同じ船に乗り』

桐野夏生とは編集 作家。1951年、金沢生まれ。成蹊大学法学部卒。会社員、 少女小説家(ペンネームは野原 野枝美・ノバラ ノエミ)を経て、 1993年、女探偵、村野ミロが主人公の「顔に降りかかる雨」で 第39回江戸川乱歩賞を受賞。 著作に、新しい性愛を描い…

村上春樹 『若い読者のための短編小説案内』

村上春樹とは編集 日本の小説家、翻訳家。国際的なベストセラー作家。代表作に『羊をめぐる冒険』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』など多数。レイモンド・カーヴァーの全訳など翻訳活動でも著名。 略歴1949年1月12日に京都府京都市で生まれる。兵…

日本の歌は「雪」と相性がいい

今週のお題「雪」 音楽批評 日本の歌は、「雪」と相性がいい。 演歌でも、J ポップでも、雪をテーマにした曲は名曲ぞろいである。 J ポップ、フォーク、ニューミュージック系でいえば、まず筆頭にあがってくるのは、イルカの『なごり雪』。 あるいは、レミオ…

マル・ウォルドロン『忘却のワルツ』

マル・ウォルドロンとは編集 Mal Waldron、ジャズ・ピアニスト、(1926-2002) 続きを読む このキーワードを含むブログを見る 音楽批評 WALTZ OF OBLIVIOUS「忘却のワルツ」 この曲は、ジャズピアニストのマル・ウォルドロンが、1966年3月1日、イタリアのミ…

『愛の年代記』より「エメラルド色の海」

塩野七生とは編集 日本(出身)の作家 1937年(昭和12年) 東京都に生まれる。 日比谷高校、学習院大学文学部哲学科卒。 イタリアに渡ったのち、1968年に作家としてデビュー。以降、「ローマ人の物語」を始め数々の著作を送る。 2006年12月、1992…

ハイテク時代のオランダを描いたフェルメール

ヨハネス・フェルメールとは編集 Johannes Vermeer ヨハネス・フェルメール(1632年-1675年)は17世紀オランダ、フランドル派の画家。本名をヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト(Jan van der Meer van Delft)という。 旅館の経営をおこなう一方…

ちょんまげコント「信長の人生相談」

ヨタ話 【織田信長 ↑ 】 最初の相談者は誰じゃ?【羽柴秀吉 ↓ 】 書状にての相談でありまする。名は宮下直樹とか。 【信長】 何用だと申しておる?【秀吉】 はっ。「先日、上司に呼び出されたところ、当方の管理する部署の生産性が急降下し、採算部門と見な…

イエス・キリストのトークショー

イエス・キリストとは編集 ナザレのイエスの名と救世主としての称号。 ヘブライ名ヨシュアのギリシア語音訳「イエスス」と救世主の意味の言葉「メシア」のギリシア語訳「クリストス」(「塗油されたもの」の意)からなっている。 西暦前2年のエタニムの月(9…

最後の義理チョコ

今週のお題「わたしとバレンタインデー」 ヨタ話 「あら、まだ残っていたから、〇〇君にもあげるわ」 と、余った義理チョコを押し付けるように、彼女は俺の手のひらに小さなチョコレートの包みを載せ、教室の扉を開けて、廊下に去って行った。 こちらの視線…

ドリアン助川氏の「積極的感受」

エッセイ・人物批評 NHKのEテレで、作家ドリアン助川氏のインタビュー番組(『こころの時代~宗教・人生~』)を偶然観たことがあった。 これがまた、とても印象に残った放送だった。 ドリアン助川氏の肩書は「作家」。 2013年に執筆した小説『あん』がフラ…

ゴジラのシルエットに日本の美学を見る

映画批評 1954年。 初代ゴジラが誕生したとき、私は4歳だった。 だから、リアルタイムでは、この記念すべきゴジラ映画第一作目を観ていない。 ただ、この初代ゴジラはたいへんな評判になり、たちまち絵本や漫画はおろか、メンコ、すごろく、かるたなどの当…

インド映画『バーフバリ』の世界観

映画批評 インド映画というものを、はじめて観た。 なんともいえない不思議な感興を覚えた。 映画名は『バーフバリ』。 2015年に制作された歴史ドラマの意匠をまとったファンタジーで、ハリウッド作品の系列でいえば、『コナン・ザ・グレート』(1982年)、…

キャンプ怪奇小説『柳』

文芸批評 ブラックウッド 「柳」 キャンプをテーマにしたホラー小説で、アルジャーノン・ブラックウッドが書いた『柳』はものすごく怖い物語のひとつだ。 『幻想と怪奇1―英米怪談集(ハヤカワ・ミステリ 1976)に収録されていた作品である。 ウィーンから黒…

余白を読む美学

文芸批評 テレビで観たか、本で読んだか。 俳句の話。 俳句とは「余白、静寂、余韻」の文学であるそうな。 五、七、五 という限られた文字数のなかで、ひとつの作品を完結させなければならない俳句は、言葉を盛り込むよりも、言葉を切り捨てることによって世…

退屈な天国、楽しい地獄 (ボッシュの絵画)

絵画批評 トルストイの小説(『アンナ・カレーニナ』)に、 「幸福な家庭はみな同じように似ているが、不幸はそれぞれの家ごとに違う」 という言葉がある。 もちろん、お互いに似通っていようが 「幸福な家庭」 の方がいいに決まっている。しかし、逆にいえ…